2つ目の課題

 人間は、腹が満たされると眠くなる! 金魚は、辺りが暗くなると眠くなる! 女の子は、オシャレして疲れると眠くなる? 最後は別として、僕のかわいい金魚達は、少なくとも2つの眠気と闘っていたのだろう。既に目がとろりんとしている。奈江と由依は既に瞼を閉じてさえいる。

「ましゅたー、もうねむい」

「いっしょに寝るとこ、しゃがそう」

 ゆとりとまりえが言った。まだ20時前だというのに眠くなるのも無理はない。僕のかわいい金魚達の身に何が起こったかを考えれば、疲れが出ても仕方がないことだ。もっと気を使ってあげれば良かったのに、この時の僕は、これを好都合だと思ってしまった。今日中に解決すべき2つ目の課題、それは『可憐にのる』ことだ。これは僕の義務で、毎日行わなければいけないことだ。だけど、そのためには僕のかわいい金魚達をおいて家を出なければならない。だから、この時間に眠りについてくれれば、こんなに好都合なことはない。

「よしっ、みんなで寝よう」

「うん。ましゅたーとねる」

「奈江ちゃんと由依ちゃんも連れてかないと」

 見た目は一番年上に見えるあゆみに由依を任せ、僕は奈江を担いで寝室へと向かった。僕の家は、友達がドン引きする間取りなのだ。全て、父の嗜好によるものだ。『地上3階地下2階』ここまでは自慢でも何でもない。僕の通う高校には、同じような構造の一軒家に住む生徒が多い。『9台分の駐車場付き』ここまでくると、半分はドン引く。タワーマンションに住む友達が中心だ。『屋外プール付き』あと10名くらいは残る。僕の通うK大附属高校は、超の付くお坊ちゃま、お嬢様学校だから。残った10名も、これでとどめが刺せる。『13LDK』という間取りである。その中で最も広いのが寝室で、そこだけでも40平米もある。これだけ広いのに、ベッドは1台しかない。3月までは家族4人で寝ていた特大のウォーターベッドではあるが。僕と僕のかわいい金魚達が横になっても、充分に収まる。僕はそこで、僕のかわいい金魚達が寝静まるのを待った。

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