ドッキリ大作戦
ビデオカメラを居間のテレビの前と僕の部屋に置き、パソコンとテレビにそれぞれつないだ。6人をテレビの前に正座させて、準備完了。あとはそーっと階段を登り、カメラのフレームに収まる。そして、スイッチオン。
ー皆にも、もうすぐ入ってもらうからね!ー
最初はわざと声だけを流し、金魚達の反応を見た。思った通りで、大騒ぎになっているのが、2階まで伝わってきた。
「マスターだ。マスターの声だ!」
「マスターは、テレビに入ったのでしょうか」
「窓の中は真っ暗のままだよ」
「なんか、わくわく、ドキドキします」
音声に対する皆の反応をパソコンの画面を通して観ているうちに、映像に対してはどんな反応をするのかを、直接この目で見たいと思った。そして僕はあるドッキリを思いついた。1分ほどの動画を記録し、再生中に下に降りて居間を覗いて見る。そして、頃合いを見てご本人登場、という演出だ。
1分動画の録画中、金魚達を多少興奮させるために、先ほどの歌番組に出演していたアイドルの配信映像を流しておいた。ここでも予想通りの反応を示してくれた。
これは大成功の予感である。ドッキリを仕掛けている側の僕までが心臓を高鳴らせていた。皆の驚く顔を単純に想像していて、楽しかった。そして、準備を整え再生中に1階に降りてみると金魚達の反応は、意外なものだった。誰も僕が映っている画面を見ていないのだ。その代わりに、僕の姿を皆で探していた。カーテンの裏からゴミ箱の中まで、隅から隅までである。そうしているうちに、奈江が扉の影に隠れていた僕に気付いた。
「あっ、マスターだ。本物のマスターだっ!」
僕の仕掛けたドッキリは、不発だったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます