6人姉弟 里山を食べる

楠秋生

つくしんぼ

 春休みに入る少し前になると、春の代名詞つくしんぼが顔を出しはじめる。学校帰りの子どもたちが片手に五、六本摘んで帰ってきて春の便りを見せてくれる。


「つくし、生えてた~!」

「まだこんだけしかなかったけどな」

「土曜日いっぱい採ってくるな!」


 笑顔いっぱいで口々に報告してくる。

 土筆つくしは子どもたちの大好物だ。

 採ってきたのが嬉しくて、早速「料理して!」とその数本を差し出す末っ子。


「でもね、たったそれだけだと、しなっとなったらほんのちょびっとになるよ? お休みの日にたくさん採ってきてよ。お母さん大好きやし」

「わかった! い~っぱい採ってくるね!」


 

 週末になると、約束通りみんなで土筆採りに出かける。

 スーパーの袋をいくつも持って、意気揚々と出かける子どもたち。


「はかま取りできるくらいの量にしてよ~」

「は~い! いってきま~す!」


 返事よく出かけたはいいけれど、きっと山ほど採ってくるな。摘み菜って、採るのが楽しくてついついたくさん採りすぎてしまうんだよね。あ、あそこにも。ここにもって。それを子どもたちみんながやると大変な量になるのだ。誰がたくさん採ったかって競争心も芽生えるしねぇ。

 大体一回採りにいくと、スーパーの袋に三つ四つパンパンにして帰ってくる。そんな量のはかまを一人でなんて取ってられない。


 はかまっていうのは、土筆の棒についているカサカサした部分のこと。輪っかになっている葉っぱで、食べるときに口の中でちくちくするので取り除くんだけど、これが結構めんどうな作業なの。指先が黒くなっちゃうしね。


 なのでここは上手に子どもたちの手を使う。


「はかま取り誰がしててくれる? お母さん、大好物なんだけどなぁ」

「はい!」

「は~い!」


 こうして収穫もその後の作業も、全部子どもたちがしてくれるのだ。もっとちっちゃい頃は一緒にやっていたんだけど、この頃は子どもたちだけで十分できるようになってとっても助かっている。

 自分たちも大好きだからやるんだろうけどね。


 そうして採ってきてくれた土筆は我が家の立派な食材となるのだ。


 砂糖と醤油で煮詰めて佃煮に。バター醤油炒め、卵とじ。他の野菜と炒めてもやしのように使ってもいいし。かき揚げにしても美味しい。

 揚げ物の時は、はかまをとらなくていいから楽チンです。


 穂先が閉じている方が美味しいとか、開いている方が美味しいとかいろいろ意見があるようだけど、閉じていると胞子の苦みがあって大人の味。開いていると子どもでも食べられる味。好みの問題ですね。

 ちなみに我が家では子どもたちがなんでも採ってくるので、ごちゃまぜです。


 春になると食べたくなる病みつきになる味。ぜひ一度食べてみてください。


 とはいっても都会ではもうあんまり手に入らないのかなぁ。以前尼崎に住んでいたときは、あちこち探したけど見つからなかったし。


 そういう方は、郊外にお出かけして見かけたときは、採ってみてくださいね。

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