ふきのとう

 春先、雪の下からいち早く顔を出すふきのとう。けれどもうちの庭のふきのとうは、とってもとってもゆっくりさん。


 二月下旬、お店で売られはじめてしばらくすると、知人から頂いたり子どもたちが採ってきたりする。


「ふきのとう、もう出てた! 採りにいってくる~!」


 通学路にあるらしく、ランドセルを玄関に放り込むとビニール袋を持って飛び出していく。そうやって一回か二回味わってから更に一週間ほどして、やっと家の裏にも顔を出してくれる。


 真っ白な雪を割って顔を出す萌黄色のぷっくりとした芽。固く閉じたそれは蕾で、すぐにほろほろと開いて花が開いてしまう。開く前の方が美味しくて、開いてしまうと苦味が増すので、気がついたときにすぐに採らないといけない。


 ここ数年は温暖化の影響か、雪がめっきり少なくなったので、ふきのとうは雪を割って出てこなくなった。

 だからといって、見つけにくくなったりはしない。

 まだ辺りの大地が冬の暗い色のなかで、目に映える鮮やかな萌黄色が存在をアピールするからだ。


 独特の芳香と苦味は好き嫌いの別れるところ。


「苦いからいやー!」


 と下の二人は顔をしかめる。上の四人は、小学生の低学年の頃は嫌がっていたのに、いつの間にか「美味しい」と言うようになっている。大人の味がわかるようになってきたんだなぁ。



 天ぷら、煮物、味噌汁、あえもの、ふきのとう味噌などにする。あくが強いので、調理は手早くするのがコツ。

 うちの家での一番人気はてんぷらで、その次はふきのとう味噌だ。


 ふきのとう味噌は、五ミリほどに刻んで炒めたふきにみりんと合わせておいた味噌を入れ、弱火で練るようにして水分を飛ばし、最後に砂糖を加えて仕上げる。

 少し甘めにすると下の子どもたちもご飯に乗せて食べる。


 そうそう、花が開いて伸びてしまったものは、葉や花を取り除き、茎の部分を軽く灰汁抜きして、肉や刻んだ油揚げ、糸コンニャクなどと一緒に煮付けても美味しい。



 雄花の花粉にはアレルギー物質があるそうなので、完全に開いてしまったものは食べない方がいいです。

 それから根は毒性があるので、採るときは花芽の下でポッキリ折りとってくださいね。

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