小さい頃キャベツとレタスと白菜の区別がつかなかったように、大人になっても蕨、ぜんまい、こごみの区別はつかなかった。全部いっしょくたに『山菜』として考えていた。だって生の山菜にお目にかかることなんてなかったもの。高級食材として探せばあるのかもしれないけれど、お手軽に手に入るのは山菜ミックスという名の水煮。中身が何かちゃんと知らないけどいろいろ山菜が入ってるんだろう、ぐらいの感覚だった。


 ところが引っ越してきたこの山は、蕨山わらびやまかっていうくらいあちこちに蕨が群生している。春になると、次から次へと芽吹いてくるそれは、まさに山の恵み。


 拳を突きだしたようににょきっと伸びたそれを、子どもたちもせっせと採ってくる。……採ってくるんだけど、子どもの口にはあんまり美味しくないみたい。料理によって食べたり食べなかったり。でも採るのは楽しいらしく、処理できないくらい採ってきちゃうのだ。


 蕨は灰汁が強いので、しっかりと灰汁抜きをしないといけない。長さを揃えてバットにきっちり並べ、タンサンをふりかけておき、その上から熱湯を回しかける。そのまま一晩おいておく。濁った水を捨てて、綺麗な水につけておく。(タンサンは熱湯の1%くらい。多すぎると溶けちゃいます)



 それだけなんだけど、バットもそんなにたくさんないしそんなに食べないのに。


「スト~ップ!」

 

 の声がかかるまで、どんどん採ってくる。


「ぽきっと簡単に折れるのが筋がなくて美味しいんやんな」


 とか言いながら。自分たちはあんまり食べないのにね。


 お客さんが来るときは、お土産にすると喜んでくれるので、


「採ってきて~!」


 と頼むとあっという間に集めてくれるのが嬉しい。こういう時は役に立つ子どもたちだ。


 食べ方は、炊き込みご飯に、天ぷら、煮物、卵とじ、パスタ、ナムルなど。


 子どもの好き嫌いからいうと、炊き込みご飯に入れると美味しそうに食べる。天ぷらも。ベーコンと蕨でペペロンチーノのパスタにしたのは、一番下のちびっ子以外は美味しそうに食べていた。

 お揚げさんと一緒に煮物にしたのや卵とじやナムルは、子どもにはイマイチだったようだ。ちょっぴり大人の味。

 


 ところで、わらび餅がこの蕨の根っこから出来ているの、知ってました? 名前からしてそのまま分かりそうなんだけど、私の頭の中では全く繋がってなかったんですよね。

 で、それを知ったので「これは作ってみなければ!」と思ったんだけど、残念ながら蕨の根っこには毒があって、しっかりした製法でしないとダメなんだとか。がっかり。

 と長年思っていたのに、この度調べなおしてみたらどこにもそんな記述が見つからない。あれ? 私の思い込みだった? わらびに毒性があるのは間違いないようで、生で食べるのは駄目なんだそうです。でも灰汁抜きすれば毒性も抜けるんですって。不思議~。


 蕨粉の作り方は、寒い時期にめちゃくちゃ手間隙かけて根っこを掘りおこして、粉砕して水にさらし、上澄みを捨ててまた水にさらし、を繰り返して沈殿したデンプンを集めるようです。根っこは細く長くあちこちに伸びていて、収穫は大変なのにわずかしか採れない。それを精製してとれる量は、1kgから7~8gとほんのちょびっとにしかならず、製造には半月ほどかかるとか。

 この大変な作業と、生では毒性がある、という二つが脳内で一緒くたになって、私の中では『蕨の根っこには毒がある』になっていたのかも。


 常に妊婦だったり乳飲み子がいたりしたので、無理だ~! と思っていたけど、今なら作れるかも? 今度チャレンジしてみます。


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