タンポポ

「タンポポの花、いっぱい採ってきて~」


 と頼んで、


「今日、天ぷらなん?」


 と返してくるのはうちの子たちくらいじゃないだろうか。

 ほんのり甘い密の味がする花の天ぷらは、子どもたちの好物だ。

 

「今日は違うのを作ってみるよ。去年、友達が作ってるのを見て作りたかったのがあるんよ」

「何それ~。どんなん?」

「内緒」

「え~。教えてよ~」

「採ってきたら教えてあげる。一緒に作ろう!」


 ボウルにいっぱい採ってきてくれたのは次女と四男。


「これでなに作るん? 早く教えて」

「今日はね、ジュレを作ってみるよ」

「ジュレって?」

「はちみつみたいなのができるみたい」


 スマホで画像を見せてやる。


「うわ~。きれい!」

「こうやってガクと花をはずしていってね」

「めっちゃ面倒やん」


 そう言いつつも、二人で花をとってくれる。あんまり手間がかかるので四男は途中でリタイアしちゃったけど。



 作り方は、洗ってばらした花とスライスしたオレンジ(他の柑橘類またはレモンで代用可)を水に入れて一時間ほど煮て濾し、グラニュー糖を加えて煮詰める。とろりとしたハチミツくらいのゆるさになったら出来上がり。


「甘~い」

「美味しい~!」


 ハチミツよりさっぱりとしていて優しい甘さのお日さま色をしたジュレは、わが家の定番になりそうだ。早速パンナコッタやホットケーキを作って食べた。

 

 黄色が鮮やかな花は、酢の物に彩りとして入れてたりもできる。




 今までタンポポが全草食べられるのは知っていたけど、花以外は食べたことがなかった。葉っぱはサラダやおひたしに。根っこはコーヒーになる。

 

 お話を書くならせっかくだし、全部食べてみることにしたのに、子どもたちは興味なさそう。


「え~。葉っぱ苦そうやからいらんわ」

「コーヒーも好きちゃうから」


 葉っぱのごま和えは、不評。長男だけは「まぁ、食べれるやん」とたいらげていたけど。

 苦味は思ったほど強くない。でもあえて食べたい! という思いがわいてくるほど美味しいとも思わなかった。使うとしたら天ぷらの一品にするくらいかなぁ。

 食糧難が来たときのために食べられることを覚えておくくらいでいいんじゃないかな。


 根っこを乾燥させて焙煎して作ったコーヒーは、なんていうか、不思議な味。甘いような苦いような、アメリカンコーヒーとハーブティーの中間みたいな感じ。

 ノンカフェインでビタミン、カルシウム、鉄分などを多く含んでいるので、妊産婦にいいようです。母乳の出もよくなるとか。体の冷え解消にもきき、女性ホルモンを整える作用もあるようです。


 薬膳としての効能はいろいろあるようですが、お楽しみで食べる分にはそんなに気にしなくてもいいと思います。体を温めてデトックス効果があるのは嬉しいですが、食べ過ぎないようにしてくださいね。

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