タラの芽

 タラの芽を初めて食べたのは、実は今の家へ引っ越してきてからだ。山菜として売っているのは見たことあるけど、値段も高いしどんな味かわからないので、買ったことがなかったのだ。


 それが、この山には普通にあちこちに生えている! 


 まっすぐに伸びるトゲのある枝の先端に出てくる新芽を、ハサミでちょんと切る。高いところは高枝バサミで。

 教えてもらって食べてみると、ちょっと苦味のある、風味豊かな大人の味。こんなのが辺りで簡単に採れるなんてサイコーだ。


 でも、子どもたちの反応はイマイチ。やっぱり苦いからかな? 


 食べないんだけど、採るのは楽しいのか一緒に散歩しながら採り歩いてくれる。



 子どもたちは食べないもんだと思っていたら、小学生になる頃には美味しい美味しいと食べだした。


 最近では登下校中にしっかり見てくれていて、


「もうすぐ採れる!」

「おっきくなってきたよ」


 と報告してくれる。


 その週末はみんなで高枝バサミと花バサミ、袋を持ってお散歩だ。


 毎年のことなので大体ある場所はわかってるから、たったたったと先に駆けていく。


 数に限りがあるから、誰が採るかでケンカしそうになるのを采配する。次女がいた頃は彼女が仕切ってくれてたんだけどなぁ。


「高いところは長男。低いところは次男。三男は長男が切ったのを受け取って」


 四男は……マイペースにそこらの枝を振り回したり、葉っぱを拾ったりしている。


「僕が採ったのが大きい!」

「僕の方が大きい!」


 そのうちこんな言い争いが始まり、手が出て足が出始める。


 ……なんでそんなにケンカがしたいかねぇ。困った奴らだ。


「美味しいの食べたい人はケンカしな~い。植物も聞いてるから、ケンカの声を聞いたら不味くなるよ」


 と言ったところで聞くわけでもなし。しょうがない子たちだ。

 まぁ、お好きにケンカしてください。でも収穫したものはなくさないでね。





 採ってきたタラの芽は、他の野草と一緒に天ぷらにする。子どもたちは天ぷらが一番のようだけど、肉巻き、あえ物、バターソテーなどにしても美味しい。パスタに入れてもいい。結構なんにでも使えるのが嬉しい。


 

 

 簡単に育つようなので、庭があるなら育ててみるのもありかもしれない。


 ちょっと注意したいのが、山に採りにいくときのこと。


 いちばん天辺の新芽を採るのだけど、それがすでに採られてしまっていたら、残念だけど脇から生えてきている次の芽を採らないでくださいね。来年伸びてくる芽は残しておかないといけないので。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る