シイの実

 確か、次女が小学3年生の時だったと思う。


「このどんぐり食べられるんやって!」


 校外学習で出かけた先で教えてくれたらしい。にっこにこのご機嫌で持って帰ってきたのは、少しほっそりとスリムで、焦げ茶色をしたどんぐり。


「どんぐりって、全部食べられるねんて! でもほかの種類はすっごい苦くって、これだけそのまんまで食べられるんやって」

「生のまま?」

「うん。フライパンで焼いてもいいって」


 ドングリにも色々あるけど、どれも食べられるのは実は知っていた。ただ、アクが強いので、しっかりとアク抜きをしなければならなくって、かなり大変な作業だと思っていたのだ。


「でも、他のどんぐりと見分けつくの?」

「うん!」


 自信満々に言うと、袋の中をごそごそ探しだした。


「ほら! 帽子が違うねん!」

「帽子っていうより、マントみたいやね」


 見せてくれたのは、ニット帽をかぶったようなのではなく、裾の方まで覆われているものだった。先が三つに割れていて、そこからどんぐりがのぞいている。

 なるほど、これなら間違うことはないか。


「これは帽子に見えるよ!」


 くるりんと半分くらいまでめくれあがっていてかわいらしい。


「この帽子のってこの種類だけなんかな?」

「聞いてないけど、帽子でわかるって言ってたからそうじゃないかなぁ?」

「図鑑もっておいで。調べてみよう」


 

 持って帰ってきたのはスダジイ。ツブラジイというシイの仲間も同じような帽子を被っているけれど、スダジイ同様に食べられるので、区別できなくても問題ない。細長いのがスダジイ。コロンと丸くて小さいのがツブラジイだ。




 早速食べてみることにした。

 まず洗って水に浸し、浮いてくるのをよける。


「古いのとか虫食いは浮くもんねぇ」

「そう。ここでちゃんと分けとかないと、虫さんとこんにちはしちゃうよ~」

「えっ。それはやだ!」


 フライパンでからいりする。


「はじけてきた~」


 パチパチと割れるのを弟たちもイスを持ってきてのぞきこむ。

 できたての熱いのを「あちっあちっ」と言いながら殻をむく。


「甘い~」

「ヒマワリの種みたい」


 うん。まさにそんな感じ。ヒマワリの種よりちょっともっちりしてて甘味があるかな。


「うわ~! 虫がいた~! 浮いたのどけたのに」

「あはは。まぁ、たまにはそういうこともあるよね。大当たりやん」

「こんなん当たりたくない~!」

 

 わいわいがやがや言いながら食べると、あっという間になくなる。


「また採ってくるね。先生が、学校にもあるって言ってたから」



 この時から毎年秋になると、次女はいっぱい採ってきてはおやつにするようになった。





 封筒に入れてレンジで1~2分でもオッケー。

 剥いてからバター焼き、炊き込みご飯に入れたり、クッキーに入れたり、色々活用もできます。


 まだやったことないけど、ドングリ粉を作って、一度ドングリパンを焼いてみたいと思ってます。


 ドングリの中では、マテバシイもタンニン含有量が少なくて、アク抜き不要とのこと。



 縄文時代には主食になっていたようで、栄養価満点。ビタミン、ミネラルが豊富で、デトックス効果もあるそうですよ。

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