概要
部屋数は不明。住人数も不明。地図があっても迷子になる。
毎日のように超常現象が起こる少女九龍城で、
彼女たちは自由気ままに生きて、遊んで……恋をしていた!
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!百合文学の一つの到達点
百合小説の名手による、オムニバス短編集。読めばすぐにわかると思いますが、この小説に出てくる少女たちには、胸が締め付けられるような、抗いがたい魅力があります。これほどまでに、多様で蠱惑的な少女たちが、一人の人間の想像力だけから生み出されていることが、驚異的です。
この小説の少女たちはほぼ例外なく、何か(あるいは誰か)を強烈に追い求めています。それはたとえば、地図を作ることだったり、写真を撮ることだったり、あるいは別の少女だったりするのですが、どの少女にも、必ず追い求める何か(誰か)があるのです。
一方で、伝統的な価値観に立てば、女性というのは、能動的に何かを追い求めるというより、誰か…続きを読む - ★★★ Excellent!!!超巨大迷路女子寮の中で営まれる、少女たちの息遣いに肉薄せよ!
九龍城とは90年代まで香港に存在した迷宮的スラムのことであり、私たちがしばしば思い描く猥雑でロマンあふれる香港のイメージの大部分がこれに依拠しているのではないか。
この作品の表題でもある「少女九龍城」は、その名に違わぬ魔境の"女子寮"である。
そこには、迷宮の地図を作ろうとする加納千鶴や、学校から近いというだけの理由でうっかり迷宮に入り込んでしまった竹原涼子、引っ込み思案なメガネっ娘の木下真由など、多数の女子が住んでいる。
増改築を繰り返した寮の中に様々な生徒が存在することで、物語がまさにモザイク状に展開されるのだ。なぜ私たちはこのようなイメージにときめいてしまうのか。それは、グーグルマッ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!百合の群像劇の傑作がここに。
特筆すべきは、その秀逸な舞台設定です。
本作の舞台となる「少女九龍城」という女子寮は、一種の異界と言えましょう。作中の描写を引用しますと、階段を登ったのにいつの間にか地下室を彷徨っていたり、ちょっと席を外しているうちに一日が経過していたり、天井裏から電車の走る音が聞こえてきたり・・・。要するに、「何が起こっても不思議ではない」場所なのです。そんな超常現象のるつぼの様な場所に、何をしでかすか分からない非常識で個性的な女の子が大勢詰め込められれば、起こる化学反応はひとつ。ものすごく不思議で、とんでもなく面白い、百合物語のオンパレードです。
登場する女の子が多種多様なら、物語の中で成立するカ…続きを読む