八犬伝異聞録 蒼き牡丹

皆麻 兎

発端

「…じ!!!やっと…やっと逢えたのに、もう逝ってしまうのかっ…!!?」



「私も、信乃様と一緒に行きたいです…!」



「この網乾左母次郎あぼしさもじろうが、この刀をなまくら刀にすり替えてやったのよ…!」



「どうか…どうか…それ…を、あの方…に…」




これらは、最近私がよく見る夢に出てくる台詞ことばだ。

夢の内容は、日々において若干異なる事はあっても、ほとんどは誰かが誰かに向かって何かを伝えようとしている。その背景は、時代劇に出てきそうな村はずれであったり、山中であったりと様々だった。

 女性を抱えて泣く男性。自身に向かって、あざ笑う男…。そして、私そっくりの女性が死ぬ間際に残す、最期の言葉――――――――

同じ夢を見続けてから1週間ほど経過した頃に、これは伝奇小説「南総里見八犬伝」に出てくる一場面ワンシーンみたいなものではないか…と考えるようになる。


 しかし、私はまだ知らなかった。この夢は、全ての「始まり」に過ぎなかったという事を――――――――――


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