第9話 森のキャンプ教室
まだワーウルフに挑むのは早いけど、そろそろ大森林の探索を始めようと思う。
森での戦い方とか休み方は口で言っても分からない気がするんだよな。
「という訳で、明日から大森林で1泊2日のキャンプをします」
「いやいや、どういう訳ですか。まぁ、キャンプは好きだから良いんですけど」
うん、好評なようで何よりだ。
キャンプとは名ばかりで探索が中心になるけど喜んでくれて俺は嬉しいよ。
「そうそう、昨日買った保存食を持ってきてくれ。他は俺の方で準備するから」
「何で保存食を買えって言うのかと思ってたけど、この為だったんですか」
この為とかじゃなくても冒険者なんだから日頃から保存食は用意しておこうな。何があるか分からんから。あと昨日も言ったけど絶対枕は持ってくるなよ?
「持ってくるのは保存食と装備品だけだぞ? 余分な物を持ってくる必要はないからな?」
因みにつばさには10日分の保存食を買ってもらった。
これはワーウルフが生息している場所に行って帰って来るのに必要だと思われる量だ。今回は必要ないが本番の予行演習として全部持たせようと思ってる。
「昨日買った保存食は全部持って来るんだぞ? あの量にも意味があるんだからな」
「あれ全部って重くないですか?」
「ワーウルフがいる所まで行こうと思ったらあれ位の食料が欲しいんだよ。本番前の練習だと思って持ってこい」
食料に関しては俺も同量の保存食を持っていくつもりだ。俺だけ楽してると思われるのも嫌だからな。他の道具も持っていく事を考えると今から憂鬱だよ……
・・・
C級ダンジョンである大森林は中堅冒険者に人気がある狩場だが、それでもワーウルフの生息地まで行くやつは殆どいない。何故かと言うとそこまでが遠すぎるからだ。
しかも苦労の割に得られるものが少ない。ワーウルフの毛皮は手触りが悪くて安いし肉は固くて売り物にならない。売れる素材と言ったらワーウルフの魔石くらいだろう。
だからワーウルフと戦うやつは皆無に近い。いても腕試しで数年に1回誰かが挑戦するくらいだ。
「じゃあ行くぞ」
「ラジャーですよ!」
大森林はモンスターが多いダンジョンだ。
いちいち相手をしていたら碌に進めないのでなるべくモンスターは避けて行く事になる。
大荷物を背負った状態でモンスターに遭遇するのは避けたいのでまずは荷物を草むらに隠してから周囲の探索をしていく。
「なんか思ってた感じと違います」
「面倒くさいかもしれないが、必要な事だ。死にたくはないだろ? 遊びじゃないんだから気を引き締めろ!」
「いやいや、今日はキャンプって言ってましたよね……」
保存食を全部持ってこいって言われた時点で気付けよ。
そもそもダンジョンでキャンプとか無理だからな? 諦めろ。
・・・
戦闘したり探索したりして時間は過ぎていった。日も沈んで辺りも暗くなってきたので今日はもう休むことになった。
「疲れたなー」
「もうヘトヘトですよー」
大森林ではゴブリンが火に寄ってくるせいでたき火が出来ない。火があると直ぐに3~6匹のゴブリンが集まって来るからだ。
「じゃあ飯にするか」
「うぅ…そのままですか? しょっぱいですよ」
火が使えないので干し肉とドライフルーツをそのまま食べる。
干し肉の塩気は強すぎるしドライフルーツも美味しい物ではないが、1日歩き詰めだと意外と美味しく食べられるものだ。
「よし、そろそろ寝る準備するぞ」
「うぅ、このキャンプ全然楽しくないです」
「もう諦めろよ。ダンジョンでキャンプなんか出来る訳ないんだから」
寝る準備と言ってもやる事は木に登るだけだ。木に登ったら一番太い枝と自分をロープで結んで後は枝にしがみつくだけ。
「え、マジでこれで眠るんですか?」
「そうだよ? 因みに下で寝るとゴブリンとかオオカミに襲われて死ぬぞ」
「むぅ。少しでもキャンプを楽しみにしてた私がバカでした」
因みに交代で見張りをやれば木の上で寝なくても大丈夫だけど、それだと十分に眠れないので黙っておく事にした。まぁ、提案されても却下するんだけどね!
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