第3話 広がる世界と松茸
俺が血涙を流した翌日にギルドカードは予定通り配られた。
俺は寝込んでいて行くことは出来なかったんだけど、その時のギルドはちょっとしたお祭り騒ぎになっていたみたいでちょっと寂しくなった。
ギルドカードやスキルの他にも発表があったみたいで、なんでも今までは出られなかった町の外に行けるようになったんだとか。
外にはモンスターも出てくるようなので、これからはダンジョン以外でもモンスターと戦う事になりそうだ。
体調が良くなった俺はマーシーに頼んで眼帯を作ってもらってから、大森林に籠る事にした。動く物が多いあの森なら右目に慣れるための場所として最適だと考えたからだ。
大森林は地獄でしかなかった。右目を開いただけでも視界に入る情報量に圧倒されて勝手に血涙が出るし、気持ち悪くなってゲロは出るし最悪だ。
それでも頑張っていると血涙が出るペースも遅くなってきて、直ぐにゲロを吐く事も無くなった。数分だったら戦闘も出来るようになった。
成長できているのが分かるのは良い事だ。俺はゴブリンの攻撃を避けながら高笑いを上げた。
・・・
「あ、師匠じゃないですか!」
食料が尽きて町に戻ってみると、夕食を食べていたつばさに声を掛けられた。
つばさは探索帰りなのか、少し汚れた格好でパスタを食べている。
1週間近くを大森林で過ごしてきた俺にとって、パスタはご馳走以外の何物でもない。本当はギルドで素材を売ってからと思っていたのだが、先にご飯を食べるのも良いだろう。俺はつばさの隣に座ると彼女と同じパスタを頼んだ。
「今までどこに行ってたんですか。心配したんですよ?」
「大森林に籠ってたんだよ。この右目に慣れないといけなかったからな」
俺はそう言って眼帯を撫でる。
つばさにはスキルの事を話しているので、それで納得してくれたようだ。
「それならそうと言ってくださいよ。手伝ったのに」
「そりゃあ残念な事をしたなぁ。言えばよかった」
そうは言っても手伝える事なんかなかったと思うがね。
基本はゴブリンとかの動きを見てただけだし。
つばさは外での探索を終えた帰りだったようだ。
マーシーもガランも店が忙しいようで、1人で探索する事になったとボヤいている。それなら他の知り合いでも作ればいいのにとも思うが、そっちの方は中々上手くいっていないようだ。
「そうだ! 師匠は明日ヒマですか?」
「別に急いでやる事はないけど?」
「えっとですね、じゃあ松茸狩りに行きませんか?」
「……松茸?」
つばさの話では2日前にギルドへ松茸が持ち込まれたらしい。
噂では東門を抜けた先にある森の中に落ちていたんだとか。
つばさも松茸を探して森を探索しているらしいが中々見つけられなくて困っているようだ。
「松茸が採れたらバロックさんが茶碗蒸しを作ってくれるって言ってるんですよね」
何でもつばさは茶碗蒸しが大好物で、こっちの世界に来てからずっと食べたかったらしい。だからどうしても松茸を入手したいが、松茸は2日前に持ち込まれたのを最後に誰も見つけることが出来ていないそうだ。
そもそも松茸を持ち込んだ冒険者も生えている松茸を見つけたわけじゃなくて落ちていた松茸を拾っただけらしいので、入手場所が明らかになっていないのだ。
「森に行くだけでも3時間は掛かるので長時間の探索が出来ないんですよね」
「ふむ、面白そうだな。その話、乗った!」
かく言う俺も松茸は大好物ですので。
目的地まで距離があって探索の時間が短くなるなら野宿すれば良いと思うんだ。
沢山取って腹いっぱい松茸を食べようじゃないか。楽しみだなぁ、待ってろよ松茸ちゃん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます