第2話 スキルに悩む
ギルドを出た後、俺たちはバロックに頼んで食堂の奥にある休憩室で話し合いをしていた。
ギルド長が言うには先行してスキルを覚えられるらしいので、取り合えずどんなスキルを取れば良いのかみんなで相談する事になったからだ。
「しかし、こうも覚えられるスキルがバラバラとはな」
「自分の行動で覚えられるスキルが増えるってこういう事かよ」
しかしいざ覚えられるスキルを確認してみると、4人とも覚えられるスキルにバラつきがあった。ギルド長の言う通り行動で覚えられるスキルが変わるようで、俺やつばさは戦闘スキルばかりだったが、ガランとマーシーは生産スキルも覚えられるみたいだ。
「まぁ、俺は戦う時に困った事ないから生産スキル一択なんだけどな」
マーシーはそう言って覚えるスキルを選択し始めた。
確かにこいつが戦闘で困ってるところを見た事がない。確か生前は陸上の国体選手だったか? 体の使い方が別格すぎるのだ。
「ワシも戦闘とか興味ないしなぁ」
ガランもそう言ってスキルを決め始める。
何だよこいつら。これじゃあ集まってる意味ないじゃん!
いやまだだ、まだつばさがいる。もうこの際2人で話し合うとしよう。
「このスキル格好良い! これにしよ」
ブルータス、お前もか! だからそれじゃあ集まった意味がないだろ、いい加減にしろ! ちくしょう。もういいよ、それなら俺も勝手に決めちゃうもんね。
スキル一覧を見ていくと、1つのスキルが目に留まった。
消費ポイントは多いけど、これは凄いスキルなんじゃないだろうか?。
【予知の右目Lv1】 1秒先の未来を視認する事が出来るようになる。
他のスキルと違ってスキルポイントを5pも使うけど、これがあれば戦闘が楽になるに違いない。なんせ1秒先の行動が分かるようになるんだから。
俺は迷わず決定ボタンを押した。瞬間、右目が熱くなる。次に頭痛、吐き気が俺を襲った。右目から涙が流れてくるのがわかる。
つばさたちが俺に向かって焦ったように話しかけているのが分かるけど、頭が痛すぎて声が聞き取れない。
涙を拭ってみると何故か手が真っ赤になった。
あぁ……これ、涙じゃなくて血だわ。血涙だわ。
「師匠! ちょっと返事をしてくださいよ!」
「これ、ダメだわ……」
俺が意識を保ってられたのはここまでだった。
・・・
「またここか。流石に知らない天井とは言えないな」
目が覚めるとそこはバロックの食堂にある休憩室だった。
気絶したのがここなんだから、目が覚めたのがここだと言うのは納得だな。
ガランとマーシーは帰ったみたいだが、つばさは床に転がって寝ているみたいだ。
「看病してくれたのかな?」
つばさの手にはタオルが握られており、そのタオルに赤い染みが出来ているのを見ると俺の血涙を拭ってくれていたのが分かる。
「しかし、予知の右目ね。なるほどな」
俺は辺りを見回して溜息を吐く。
つばさの体や俺の体がブレて見えている。多分これが1秒先を見るって事なんだろう。Lv1だからなのかスキルを制御ができないようで動くもの全ての1秒先が見えるみたいだ。
「うぅ……気持ち悪くなってきた」
これは情報量が多すぎて吐きそうになる。
俺は右目を閉じて深呼吸をした。まずは慣らすところから始めないと使い物になりそうもないな。
「あっ、師匠起きたんですね!」
「おぅ、心配かけたな。もう大丈夫だ」
「本当に大丈夫ですか? わたし目から血が出た人を見たの初めてですよ」
心配するつばさの頭を撫でて落ち着かせる。
しかし常に右目を閉じてるのも嫌だしマーシーに眼帯でも作ってもらおうかな。
「本当に大丈夫なんですよね?」
「だから大丈夫だって言ってるだろ。これだってスキルの影響で血が出ただけだしな」
「でもでも! 心配ですよぅ!」
「あーもう、俺の事は良いんだよ。それより帰るぞ。ほら、送ってやるから準備しろ」
今日はもう遅いし取り合えず今日は帰ることにしよう。
今日はギルドに呼び出されたりスキルを覚えたりで疲れてるんだ。
「おぅ、もういいのか? なんか目から血が出たとか聞いたけど」
「もう大丈夫だ。悪かったなバロック」
心配そうにしているバロックに謝った俺はつばさを引きずって店を出た。
もう時間も遅いようですっかり暗くなっている。
「おいおい、ここまでブレて見えるとは思わなかったな」
試しに空を見てみると空を流れる雲までブレて見えた。
これは使いこなすのに時間が掛かりそうだ。とんでもないハズレスキルを引いちゃったかもなぁ。
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