第6話 松茸を採取したら権利書が手に入った

 ひと眠りしてイノシシの方を見てみると、一晩中暴れていたのか周りの地面が所々すり減っていた。イノシシは疲れたのか動きが悪くなっている。


 「よしよし、良い感じだな」


 俺は取り合えずイノシシを弓で攻撃してみる事にした。

 放った矢はイノシシの体に深く刺さり、その度にイノシシの体は痛そうに揺れる。


 「おぉ、普通に刺さるんだな」

 「あぅ、おはようございます、師匠」


 イノシシの悲鳴でつばさも起きてきたので、一緒に遠くからチマチマ攻撃していく。矢が刺さるたびにイノシシが弱弱しい鳴き声を上げるが、ロープで足を縛っているからか動くことが出来ないみたいだ。


 「デカいから良い的だなー」

 「何か罪悪感が凄いですね、これ」


 手持ちの矢が無くなってもイノシシが死ななかったので今度は木の枝を削って尖らせた後にそれを突き刺していく。イノシシはもう殆ど動かない。


 偶に血の匂いを嗅ぎつけたウルフが来るのでそれを木刀で追い払いながら俺はイノシシに木の棒を突き刺していった。最早それは作業だ。

 つばさがナイフで木の枝を削り、俺が突き刺していく。そんな作業は夜まで続くことになった。


・・・


 イノシシを倒した後に残ったのは肉と松茸に毛皮、あとは一枚の紙だった。

 紙には【土地の権利書】と書かれている。これをギルドに提出して一定のお金を支払うと、この森の一画をプライベートエリアとして活用できるようになるらしい。


 具体的にどういう事かと言うと、これを使って土地を購入したら任意のモンスターや人物を購入した土地に入れなくすることが出来たり、購入した土地に自分の家を建てる事が出来るようになるんだとか。毎月一定のお金を支払わないといけないようだが、金額的には宿に泊まる料金とそんなに変わらない。


 町から離れた場所というのがネックだが、これは魅力的なんじゃないだろうか?

 ダンジョンに通うのが難しくなるのは嫌だけど……


 「これ、凄くないですか!?」

 「自分たちの好みの家を建てれるのは良いよな」


 多分だけど、今回手に入れた松茸や毛皮を売ったお金と貯めたお金を合わせれば十分に土地を買うお金は堪ると思う。問題としては家をどうやって建てるかだが、そこら辺はガランとかマーシーに手伝ってもらえば何とかなるだろう。


 購入できる土地は結構広いし、共同で購入しても良いかもしれないな。ガランとマーシーは町に店があるから微妙かもしれないが、聞いてみるだけ聞いてみるか。

 それもこれも町に帰ってからじゃないと決められないよな。松茸も手に入ったしそろそろ帰ろう。


 「とりあえず目的の松茸は手に入ったんだし町に戻るぞ」

 「そういえば松茸が目的でしたね! 早く帰りましょう」


 この権利書に期限は書いてないし、後回しでも大丈夫だろう。

 もう色々あって疲れたし、早く帰って休みたい。


・・・


 星空がきれいに輝いている。

 残念な事に俺とつばさはまだ町に帰る事が出来ないでいた。

 何故なら行く時と違ってモンスターが俺たちを執拗に襲ってくるからだ。


 冒険者がみんな町に帰っているからなのかは分からないけど、今も6匹のウルフに囲まれている。


 「これ、明らかに異常だろ」

 「もう疲れましたよぅ」


 俺は右目から血を流しながらウルフたちを睨む。

 右目を多用したくないけど、使わないと突破する事も難しそうなんだよな。

 飛びかかってきたウルフを木刀で殴り飛ばしながら俺は息を吐いた。


 「つばさ、右方向からウルフが来るぞ!」

 「了解です!」


 つばさがナイフを振り抜く。そこには今にもつばさに喰らいつこうと飛びかかってきていたウルフがいた。ウルフの喉にナイフが突き刺さる。

 町はもうすぐなんだが、このままで辿り着くことは出来るのだろうか? すでに右目は霞み始めていて、もうすぐ右目は一定時間見えなくなってしまうだろう。そうなった時に俺は戦えるのだろうか。


 「師匠、こうなったら私のスキルを使います」


 つばさはそう言うと剛力のスキルを使用した。つばさの体は赤黒い色に染まっていき、体から煙を噴き出し始める。

 それを見たウルフが焦ったように飛びかかるが、それをつばさは殴り飛ばした。


 「ちょっと強引に突破しますね。捕まっててください」

 「え、ちょっと?」


 つばさはそう言うと俺を担ぎ上げて走り出した。

 つばさの身長は150cmもないので、俺を担ぐは無理があると思うんだが、そんな事はなかったようだ。地面が俺の顔スレスレにあるので超怖い。


 結果的に逃げきれて町にも入れたけど二度と同じことはやりたくないと思いました。

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