第7話 とちトチ土地!

 「土地の購入は200万円になります」


 笑顔のギルド職員から出た言葉は衝撃のそれだった。

 いや、現実的に考えれば破格の値段なんだが、俺の中ではもっと安いと思っていたのだ。俺の自由にできるお金は80万と少し、それが今月のこの世界の利用料金を抜かした全てだったんだが……


 つばさも今の時点で自由に使えるお金は30万円程だそうで、どう考えても足りそうもない。


 そもそも俺は80万を全て使うなんて事はしたくない。

 この世界でも一応お金を稼げているけれど、何があるか分からないから多少は残しておきたいからだ。ぶっちゃけ食費とか考えたらもっと使えるお金は減るだろうし。


 この世界は厳密に言えば食事をとる必要が無いから食費は必要ないんだけど、空腹感はあるので少しは食べないと動く事もままならなくなるんだよなぁ。


 「こりゃ、松茸や毛皮を売ったお金を足しても200万には届きそうもないな」


 因みに松茸の買取金額は1本1万、毛皮は纏めて5万だった。

 入手できた松茸は全部で15本、俺たちが食べる用に残していく事にした5本を抜かせば10本。イノシシの肉は二束三文だったのでギルドでの買取金額は合計で15万と少しという事になる。


 ギルド以外で売ればもう少し高値が付く可能性もあるが、そんなに金を持っている人間は一握りだし、そういう奴らは自分で狩りに行くだろう。

 松茸と毛皮を売っても俺とつばさが使えるお金は合計で130万円、残りの70万円をどうするか考えないといけない。


・・・


 それから俺はガランとマーシーに声を掛けた。

 家を作ってもらう事と、共同で土地を買わないかの相談をする為だ。

 この権利書で購入できる土地は150坪、普通の家だったら数軒は建てる事が出来るだろうし、土地を共同で買うのもありだろう。


 案の定2人は土地の購入に乗り気なようだった。

 バロックの店で遅めの晩飯を食べながらこれからの事を相談していく。


 「どうせだったら小さい家を何軒か建てるよりもデカい屋敷を建てようぜ? そっちの方が広く空間も使えるし、色々できそうだからよぉ」


 ガランがそう言うと、マーシーも頷いた。

 俺も異存はなかったので文句はないが、女性のつばさ的にはハードル高いんじゃないだろうか。1つ屋根の下に男3人と女1人とか嫌じゃないだろうか。


 「いいですね、それ! 賑やかで楽しそう!」


 しかし俺の想像と違ってつばさも乗り気だった。

 いや、別に良いんだけどね。話し合いの結果2階建ての大きな屋敷を建てる事になった。1階にガランとマーシーの工房兼店を設置して、他の人達も買い物に来れる共同スペースに、2階を俺達の生活スペースにする事になった。


 「面白そうな話をしてるなぁ、おい? 俺も混ぜてくれよ」


 どういう間取りにしようかと話し合っていたら厨房からバロックが出てきた。

 何だかんだあってバロックも土地の購入に参加してくれることに。


 あれ? これって生活基盤の衣食住が揃っちゃった感じじゃね?

 しかも5人で分配すれば土地も普通に買えちゃうんじゃね?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

電子世界を生きる(旧タイトル 死んだ後の世界で) トカゲ @iguana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ