第8話

「そうだったんですね。あの、申し訳ないんですが、その方に支払っていただいた代金をお返ししたいのですが、渡しておいていただけないでしょうか?」


「ええ、それは構いませんよ。それにしても、地球の方はこんな普通の反応なんですか?もっと、怯えて逃げるとか聞いていたんですが…………もしそうだったら、お店の申請してみてたら地球も普通に出店出来そうですね!」


とても嬉しそうに話す店員に私は苦笑いしてみせた。


「これは普通の反応ではないと思いますよ。普通は、言われてる通り怯えて逃げたりするんだと思います。私は正直驚きすぎてリアクションできていないだけですから。」


自分のせいで地球出店が決定とか勘弁して欲しいので、懸命に説明する。


そんな事を考えて喋っているあたり、私はここが普通の居酒屋ではないと納得してしまっていたのかもしれない。


「そうなんですか。残念です。地球のお店を参考に作ったので、出来れば一番出店申請を出したかったのですが…………でも、慣れたら普通に来てくださりそうですよね。地球からのお客様とか珍しいのでこれからもよろしくお願いします。」


深々と頭を下げる金髪の店員。


私もつられて頭を下げる。


そこへ、白髪の店員が近寄ってきた。


「店長、休憩行って良いですか?」


「ああ、もうゴンは来てるから大丈夫だよ。」


「では、行ってきます。」


頭を下げて店の奥に入る白髪の店員と金髪の店員を見比べる。


今のやり取りからしたら店長が金髪の少年で、金髪の少年よりも上司っぽく見える白髪の青年が店員だったようだ。


「あなた、店長……さん?」


私が思わず訊ねてしまったら、躊躇いなく頷きを返されてしまった。


「そうです。この店舗を任されてまだ十五年の若輩者ですが。」


微笑むその幼さの残る顔を、思わず穴が開きそうなくらいに見詰めて年齢を見極めようとする。


そうせずにはいられなかったのだ。


十五歳にもなっていそうにない金髪の少年が、十五年も店長を勤めているということがとても頭が納得しなかったから。


「店長、遅くなりました!すみません!」


「ああ、ゴン。着替えが終わったら、ホール頼むよ。」


私は、その声でようやく我に返った。


自分がどうしてここに戻ってきたのかなんていうことも全て忘れて金髪の少年を見ることに集中してしまっていたようだ。


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