第14話

「わぁ、本当にすみません!私たち今日も飲んでいきますので、回収業者さんが来られた時に自分で渡します。」


「大丈夫ですか?回収業者さんは、あまり早い時間には来られないし、決まった時間に来られる訳じゃないですよ?」


「ええ、大丈夫です。」


店長が小さな布袋をくれた。


「これをそのまま渡して大丈夫ですよ。ちゃんと、預かった分の金額が入っていますから。」


「はい。いろいろありがとうございます。…………それと、お訊ねしたい事があるのですが。少し良いですか?」


私が訊ねようと思っているのは、先程の謎。


「ええ、どうぞ。大丈夫ですよ。しかし、立ち話も何ですから、とりあえず席の方へご案内致しますね。」


「あ、はい。ありがとうございます。」


いろいろ気配りしてくれる店長に私は頬を染めた。


それは、店長が美形だからではない。


店長はかなりの美形ではあるが、それが頬を染めた理由ではないのだ。


ずいぶん年下の少年よりも自分の方が気配りが足りていないことへの恥じらいだ。


「…………あの、先輩?」


控え目に声をかけてきた遠藤くん。


私はすっかりその存在を失念してしまっていて、声をかけられたことに驚いていた。


「あ、ああ。遠藤くん。いろいろ勝手なことしてごめんね。」


それから、一瞬少しは説明した方が良いだろうかと考えたが、中途半端に説明したらややこしいことになりそうだったのでやめることにした。


「こちらへ、どうぞ。」


店長が案内してくれたのは、昨日と同じ場所。


「すぐに戻って参りますので。」


そう声をかけてから、店長は何処かへ行ってしまった。


「さあて、遠藤くん。何頼もうか?」


メニュー表を遠藤くんに渡して、自分も取る。


今日も晩御飯はまだなので、まずは食事からだ。


それにできたらお酒は香田さんが来てからにしたい。


「俺は、まず飯からですね。先輩のおすすめとかありますか?」


「うーん、そうだねぇ。」


私は定食のページを開いた。


その中の酢豚定食を指差して遠藤くんの方に見せた。


「そんないろんな料理食べてみた訳じゃないけど、酢豚定食は前食べた時にすごい美味しいと思ったよ。」


「そうなんですか!じゃあ、俺それが良いです!あと、酒とつまみは香田が来てから頼みます。良いですか?」


「そうだね。私も香田さんが来てから一緒に飲みたいなと思ってたから。まずは、腹ごしらえ。…………私は唐揚げ定食かな。」


そんなに悩む事もなくすぐに注文したいものが決まってしまい、店長が来るまでの間、遠藤くんから何か訊かれるかもしれないと思ったが大丈夫だった。


すぐに、店長が戻ってきたのだ。


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