第13話

厨房から覗いている人も見慣れた普通の人だった。


キョロキョロして昨日の店長の姿を捜したが、見当たらないので、一番近くにいたいがぐり頭の店員に話しかけた。


「すみません。店長さんいらっしゃいますか?」


「え?店長ですか?」


「はい。」


「私が、店長ですがどうかされましたか?」


昨日とは違う店長に私は内心首を傾げながら、更に質問を重ねる。


「あの、こちらには店長さんは二人いらっしゃるんですか?」


「いいえ、私だけですが?」


何かクレームか何かだろうかと真剣な表情の店長。


「あ、ええ。すみません。失礼しました。」


私は慌てて、遠藤くんの腕を掴んで店から出た。


「先輩?いきなりどうしたんですか?」


私の奇妙な行動に遠藤くんはとても心配そうな顔をしている。


私も混乱していたので、口は開かずに微笑んで見せてから昨日の事を思い出した。


…………地球のお店を参考に…………


店長がそんな事を言っていた気がする。


それはもしかして…………


私は思い至った事実に苦笑いした。


「遠藤くん。私ちょっと、この先のコンビニに先に寄りたいんだ。ついてきて。」


私は遠藤くんの返事を聞かずに腕を掴んで連行した。


「え?あ?先輩!さっきからどうしたんですか?」


困惑した様子の遠藤くんは、何の説明もしない私にどうすれば良いのかわからないのだろう。


説明なんてできないので、私はひたすら「いいから。」を繰り返して突き当たりにあるコンビニに入った。


さすがに遠藤くんをコンビニの前で解放して店内を少しうろうろ。


それから、特に欲しくもないガムを二つ買ってお店を出た。


「お待たせ。さぁ、行こうか。」


私は今度は遠藤くんの頷きを確認してから歩き出した。


途端に昨日と同じ違和感に襲われる。


それでもそのまま歩くと先程と全く同じ『居酒屋 蒼海』が存在していた。


私と遠藤くんは、二度目の『蒼海』に入店した。


「らっしゃいませ~!」


店に入った途端に、やはり威勢の良い声が聞こえてくる。


しかし、数分前に入った時とは店員が違っていた。


出迎えたのは白髪の店員。


そして、奥の厨房から覗いているのは黒髪の店員。


厨房の横の扉から金髪の少年店長が現れる。


昨日と同じ面々を見て、私はホッと息を吐いた。


「…………あれ?さっきと違う店員さんだ。何でだろ?」


遠藤くんの少し混乱したような呟きを無視する。


店内を見回していた店長が、私を見つけて動きを止めた。


私は、小さくお辞儀をする。


店長が、微笑みながら頷きを返してくれた。


それから、私たちの所にやって来た。


「昨日はありがとうございました。」


「いえいえ、しかしあの後まだ回収業者とは会っていないんです。一応、お金をあの回収業者の方の使える通貨に両替しておいたんですが…………」


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