第2話

と、いきなり右側の座敷で飲んでいる人たちが皆で大爆笑し始めた。


肌も髪も黒く角刈り頭の厳つい人が銀髪の人の肩をポンポンと叩きながら何やら話しかけている。


そして、銀髪の人は恥ずかしそうに頬を染めて頭を掻いている。


その様子だけ見ていると、ほんと国とか言葉とか関係なく仲良く飲んでいるようだ。


そんな色んな国の人と付き合いのありそうな会社がこの辺りに出来たのだろうか?


その辺りは謎なままだが、この和気藹々な雰囲気はとても心地が良くて好きだ。


「こちらへ、どうぞ。では、ご注文が決まられましたらお呼びください!」


私は慌てて頷いて案内された場所に座った。


隣のテーブルには銀髪の男の人が三人が座っている。


その中の、髪の長い銀髪の人と一瞬目が合ってしまって、思わず会釈してからメニューを見始めた。


かなりお腹が空いているので、まずは腹拵えをしてから飲むことにして定食類のページを開く。


刺身定食、煮魚定食、唐揚げ定食、ハンバーグ定食、酢豚定食…………まずはガッツリと食べるつもりだ。


写真を見比べながら悩んでいると、ふと、隣のテーブルの会話が気になった。


「……………この前、作業中にちょっとヘマやっちゃってさ。一人潰しちゃったんだよね。俺、歩合制だからその分が減るの痛かったわ~」


「おまえ、歩合制で契約してんの?バカじゃん!今時、歩合制なんて不安定なのやってたら食っていけねぇだろうが。そんなのやってんのは、自分の能力試してみたいとかいう自分の力に自信があるやつだけだぞ?」


「こいつ、絶対、何気に自分やれるかもって歩合制の契約してんだと思うぜ。だって、この間『やれると思ってたのに、おかしいなぁ?』って首捻ってたの見ちゃったもん。」


どうやら、話の内容は仕事のことのようだ。


私は白髪の人たちが一体どんな仕事をしているのか気になって耳に意識を集中させる。


「まあ、二人よりは何でも出来るから、つい試してみたくなったんだよ。」


「何言ってんだよ。体力も知力も見た目もほとんど一緒なのに何処が俺らより出来るってんだよ?」


冷ややかなその言葉に私は思わず、顔を向けてしまった。


ヤバい、顔を逸らさなくてはと思いながらも、視界の中の三つの顔に衝撃を受けてじっくり眺めてしまった。


まるで、複製されたお面のように全く同じ顔が三つ。


髪の長さ以外は、全て一緒だったのだ。


私が目を逸らすことが出来ないでいると、三人の方が先に目を逸らした。


そして、何事もなかったかのようにお喋りを再開した。


「……三つ子?」


私は、メニュー表で自分の顔を隠しながら小さく呟いた。


それから、自分があまりにも不審者っぽいことに気づいて、とりあえず注文を先にすることにした。


ちょうど良いタイミングでやって来た、銀髪の少年に適当に注文をしてから再び隣の三人の会話に集中する。


「俺んちと違って、お前は一人暮らししてるからやり易いだろ?」


「…………いや、そうでもないよ。何だかんだって理由をつけて様子を見に来てくれるからな。」


「お前のとこは父親も母親も厳しいからな。」






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