第3話

三つ子なら父親も母親も同じはずなのに何を言ってるんだろう、と思わず首を傾げてしまう。


「お待たせしました~!」


白髪ロングの店員が、私の前に次々と料理や飲み物を置いていく。


煮魚定食は注文した覚えがあるが、それ以外の枝豆や冷奴や唐揚げやポテトにビールは全く記憶にない。


一瞬、間違えて持ってこられたのか店員に確認しようかと考えたが、自分がかなり適当に注文をしていたことを思い出して、口を閉じた。


食べ始めたら案外入るかもしれない、と開き直ってテーブルの隅の茶色い箱から割箸を取り出した。


結構お腹が空いていたので、漂う良い香りにキュウーと急かされる。


ご飯を食べてからにしたら美味しくなくなってしまうビールのために、まずは冷奴と枝豆を食べてビールを一口。


それから考えて、ご飯を食べながらでも飲めるような気がして煮魚定食に手を付け始めた。


煮魚の程よい味付けに、幸せの溜め息を吐いた一口目。


二口目からはもう、食欲に任せて豪快に勢いで食べた。


私が座っている場所が一番奥の壁側なので、何となく気が楽で、すごくリラックスして店内を見回す。


「らっしゃいませ~!」


店員の元気な声と共に、新たな客が入ってきた。


肌の色以外が全て真っ赤な人と、肌の色以外が全て真っ青な人の二人組。


私は普通に有り得ないその配色に目を凝らす。


それは、とても染めたものには見えないけれど、そんな配色の国なんて見たことも聞いたこともない。


お酒を飲んだからちゃんと区別できてないだけで、きっとこれはコスプレとか何かでやってるんだ。


そう考えれば、隣の白髪三人組もそっくりさんメイクをしているだけで三つ子じゃないのかもしれない。


そしたら、話してる内容も納得できる。


きっとこのお店、コスプレで来店とかのイベントを始めたのだ。


そう考えればみんな外国人に見えるのに普通に日本語喋っていることもおかしくない。


私はすっきりした気持ちで残りのビールを一気に飲み干した。


いつもはビール一杯で酔うことなんてないが、今日はすでにほろ酔い気分。


ビールのおかわりを注文して、ポテトや唐揚げをチビリチビリと摘まむ。


全部食べきれるだろうかと心配していた、料理もほとんど食べてしまい、自分の食欲を思わず笑ってしまう。


「らっしゃいませ~!」


また、新たな客が入ってきたようだ。


入り口の方に目をやると、そこには同じ仕事場の後輩二人が立っていた。


別に仲が良い訳でもないので、声をかけることはしない。


二人は店員が案内しようとしているのに、表情を強張らせて固まっている。


もしかして、外国人が苦手なのだろうか。


店員が困り果てているのを見て、私は思わず立ち上がった。


「おぉい!遠藤くん、香田さんこっち~!」


私の大声に二人はビクリと身を震わせて反応した。


それから、私の姿を見て引き吊ってはいるものの、笑顔になった。


金髪の店員が私の方にやって来て、


「こちらに案内してよろしいですか?」


と笑顔を向けて来たので、私はもちろんと頷いた。


「…………ありがとうございます。」





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