概要
わたしはあいつに会いに行く。
あいつの待ち受けから作った、中学卒業記念のハガキ。
その空の場所を見たくて。
それを口実に、あいつに会いたくて。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!空虚に感じたその色は、甘酸っぱさに塗りかえられて。
お話は主人公の女の子の一人称で描かれています。
これをどの目線で読むかが問題で、誤解を恐れずに書きますが読み終えた後には"加害者目線"、つまり親の目線で娘の日記を読んだような感覚になりました。
『そんな風に思っていたんだね。
我慢させてばかりでごめんね。
上手に甘えさせてあげられなくてごめんね。
もっと本音で、毒だろうと棘が混じっていようとも、そんな事は気にしなくていいから、その飾らない言葉で想いや望みをぶつけてくれていいんだよ。』
そんな感情を覚えました。
さて、新樫様の作品にはいつも泣かされますが、この物語も例に漏れず途中から涙止まりませんでした。
子の自尊心は親の育…続きを読む - ★★★ Excellent!!!真っ青い夏空と真っ白い雲の下で
自分のことが誰よりも嫌いで、クラスでも「いいひと」として振る舞うことでなんとか自分の居場所を作っている高校生の倉橋。友達という友達もおらず、家族ともあまり上手くいっていない彼女が、中学校で密かに思いを寄せていた竹内と再会したことをきっかけに、自分を塞いでいる殻を破る一歩を踏み出します。
自分のことが嫌いで、誰にも迷惑をかけたくないし、誰にも気を使ってほしくない。そんな気持ちに心当たりがあって、主人公の気持ちに共感していました。また、心の状態を描写する時の「きゅうっと」「ふわふわして」といったような言葉の使い方が上手くて、心地よいリズムを生み出していると思います。
色とか空の描写とか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この世界を知り、好きになるということ
思春期の悩みや淡い恋心を綴った短編作品。
恋愛小説としての完成度についてはたくさん言及されていますので、代わりに子どもから見た「世界」について、思ったことをつらつらと書き残しておきます。
(素直な作品紹介を読みたい方は、ここで回れ右をして他の方のレビューをご覧ください)
★
幼い頃は周りの大人たちがとても気を使い、たいていのわがままを許してくれるため、自分のために特別に作られた狭い箱庭で庇護されていることにまったく気がつきません。
しかし、学校などでの共同生活が始まると、他者との関わりから急に視野が広がり、外の世界の真実を知ることになります。
この世界は、自分一人のために作られて…続きを読む