この世界を知り、好きになるということ

思春期の悩みや淡い恋心を綴った短編作品。
恋愛小説としての完成度についてはたくさん言及されていますので、代わりに子どもから見た「世界」について、思ったことをつらつらと書き残しておきます。
(素直な作品紹介を読みたい方は、ここで回れ右をして他の方のレビューをご覧ください)

   ★

幼い頃は周りの大人たちがとても気を使い、たいていのわがままを許してくれるため、自分のために特別に作られた狭い箱庭で庇護されていることにまったく気がつきません。
しかし、学校などでの共同生活が始まると、他者との関わりから急に視野が広がり、外の世界の真実を知ることになります。

この世界は、自分一人のために作られているわけではありません。
必ずしも思い通りにならず、理不尽に感じることもしょっちゅうです。
不安に脅かされ、自分の存在意義・存在価値を見失ってしまうこともあります。

でも、世界は忌諱すべきものだけで構成されているわけではありません。
素敵なものや愛すべきものもたくさんあります。
手に入れることができない人は、近づいて手を伸ばす、ちょっとした勇気が足りないのかもしれません。
何も見つけられない人は、きっと当たり前すぎて気がついていないのでしょう。

この世界は捨てたもんじゃない。
「ラムネの空」(=幸せの青い鳥)はどこにだってある。

――そんな大人からの優しいメッセージを読み取りました。

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