空虚に感じたその色は、甘酸っぱさに塗りかえられて。

お話は主人公の女の子の一人称で描かれています。
これをどの目線で読むかが問題で、誤解を恐れずに書きますが読み終えた後には"加害者目線"、つまり親の目線で娘の日記を読んだような感覚になりました。


『そんな風に思っていたんだね。

我慢させてばかりでごめんね。

上手に甘えさせてあげられなくてごめんね。

もっと本音で、毒だろうと棘が混じっていようとも、そんな事は気にしなくていいから、その飾らない言葉で想いや望みをぶつけてくれていいんだよ。』


そんな感情を覚えました。


さて、新樫様の作品にはいつも泣かされますが、この物語も例に漏れず途中から涙止まりませんでした。

子の自尊心は親の育て方に大きく影響を受けると言います。
この物語の主人公も複雑な家庭の事情を彷彿とさせるような筋書きで描かれていますので、
きっと承認欲求が充分に満たされず、この歳まで育ったのではないかと推察されます。


ラヴストーリーとして評価されるのも当然頷けるのですが、私としては目の前に広がる世界で迷子になっている、
作中の言葉を借りるなら"ラムネ色の空を逃避行の対象としてしか見れなかった"一人の女の子が、
周りの環境を受け入れて前に進むきっかけとなるような、同じ色でも捉え方が違えばいい意味で変わって見えるような、成長のプロセスの一端を描いた物語に感じました。


そこに相手役の男の子の影響が多大にあった事は言うまでもありませんが、
彼女はこの時を機に一歩大人への階段を登ったのでありましょう。


とても素敵なお話でした。

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