読み終えた後、溜息をつきました。
やっと呼吸が出来たという方が正しいでしょうか。
物語に描かれているのは禁断の恋。
兄妹の尊い想い。
ライトノベルにありがちな"ニヤニヤ、ムフフ♡"の妄想を楽しむよう内容ではなく、
完全なシリアスものです。
叶わぬ事がわかっているからこそなのか、
これほどまでに狂おしい愛を叫び綴った物語を始めて読んだ気がします。
とにかく熱量が凄い。
その想いの強さに圧巻させられました。
幾度もの雨を浴びても、
幾年月もの季節が移ろっても、
頑なに開くことのなかった蕾がやっと花開いたのに、
そのひとひらはまるで散る時を知っているかのように儚く、
されど秘めたる情熱は冷める事のなく、
むしろ存在価値すらもお兄様との思い出が全てとも取れる彼女にとっての幸せを思うのなら、冷ます必要などなく、
覚ます権利など誰にもない。
ましてやそれが交わる事のなかった両想いであったのなら…。
あゝ、これ以上は語るまい。
読んで貴方様自身の心で感じるのが宜しいかと。
私は鳥肌が立ちました。
そんなとてつもなく途方もない切なさに、
物語の最期を締める挿入歌が敢えて、
"瀬をはやみ 岩にせせかる 滝川の"
までなのがまた何とも胸に染み入る恋慕の物語です。
この物語は、作者様の『君想フ銀ノ雨 君慕フ金ノ庭』と『金の庭に降る銀の雨』をひとつにまとめ、新たなエピソードを追加した総集編となっています。
私は既に前述のそれぞれの短編は読んでいたのですが、改めて連続したひとつのストーリーとして読むと、より切なさがこみ上げてきます。
もともと独立した短編だったので、前半部分で結末が描かれています。
その結末を、知った上で後半を読むことで、切なさ、悲しさ、虚しさ、なんともやりきれない辛い感情が湧き出てきます。
新たに追加されたエピソードも、幸せなはずなのに、とても悲しいです。
登場人物の感情表現がとてもきれいで、短い言葉なのに、短い言葉だからこそ、ストレートに伝わってきました。
せび読んでみてください♪
兄である秀一郎と、養女としてやってきた妹の恵子。兄弟として慕い合う初々しいふたりは、成長し、やがてお互いを一層深く想い合うようになり——
そんな、清らかで美しい兄弟の心の変化と直面する現実、そして苦しいほどに切ない結末までを描いた、作者の作品『君想フ銀ノ雨 君慕フ金ノ庭』。この作品は、その総集編としてまとめられたものです。
涙が抑えられないほどに深く、痛々しいほど清らかなふたりの想い。運命に逆らうことのできないやりきれない悲しみに、作者は総集編において暖かな物語を書き加えました。本作品を最後まで読んで初めて、秀一郎と恵子の全てを見届けた安らかさを味わうことができます。
人を恋すること。愛すること。その甘さも苦しみも、喜びも……ひとを想う尊さを余すところなく堪能できる、心を強く揺さぶられる物語です。