遺伝子に抗う不器用な愛の形

作品に描かれる境遇が自分事のように感じられる読者は少ないと思います。
ただ、主人公と同じ境遇が身近にあるのも現代としては珍しくもないのが今の日本社会です。

DNA上の親、育ての親、いずれも親として世間的には表記できる法的な書類はあるのでしょう。

しかし、子にとっての親というのは何もかもを抜きにして、言葉や書面云々ではないことを考えさせられます。

親という字は親しいという意味を成す一文字の漢字で書きます。

つまり、子にとってもっとも身近に感じる存在であり、混じりっけなしに親しい関係であるには、その子にとって只々愛情を注げる大人であると表現出来ます。

非常に複雑で哲学的にも感じますが、彼のお父さんが彼に話したセリフが、親としての愛情を物語っているように感じました。
逆にこの手の母親の方は子を所有物か何かと勘違いしているように思えます。


さて、新樫様の作品は、なぜだか父親という立場にいる人たちにこそ読んで欲しいものが沢山ありますね。

レビューとは矛盾するかもしれませんが、本作も何も考えずにただ我が子を思い浮かべながら読んで頂ければと思います。

途中から画面が見えづらくなったなら、貴方にもきっと親としての愛情がしっかりと根を張っていて、いつかそれが芽吹く未来があると語っているように感じました。

貴方のその『手』は、この先は何の為に使うか、何を得るのか、何を捨てるのか。

その選択肢の先が後悔のない未来であるように私たちは悩みながら今を生きるのでしょうね。

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