第8話、未知との対峙
菊地と、これからの生活について、ある程度の相談をした友美は、里美や、愛子が待つ公園へと向かった。
駅前の大通りを一筋、繁華街へと入った所にある公園で、茂った樹々があり、所々に設置してあるベンチには座って本を読む者もいて、中々に静かだ。
友美は、石畳で造られた散策路を歩きながら、公園の南へと向かった。
静かな公園の雰囲気に、友美は、心を落ち着かせる事が出来た……
『 ユキは、きっと何かを感じたのよ 』
愛子が言った言葉が、友美の脳裏に蘇る。
( 初めてユキと出会ったのは、確か、あの歩道橋だったわ…… )
惨劇の事件が起こる前日… 実は、友美は、ユキを見かけていた。
学校近くにある大通りに掛かっている歩道橋を渡っていた友美は、ふと、下の車道を横切る、同じ学校の制服を着た女子生徒を見つけたのだ。
交通量が多い通りにも関わらず、その女生徒は、平然と斜めに車道を横断している。 周りを通過する車からは、クラクションが1つも鳴らされない。 まるで、彼女が見えていないかのようだ……
奇妙な光景を、友美は不思議そうに眺めていた。
すると、その生徒は突然立ち止まって振り返り、歩道橋にいる友美の方を見上げたのだ。
車道の真ん中に立ち止まり、じっと、こちらを見つめている……
友美は、背筋が寒くなる感覚を覚えた。 明らかに友美に気付き、見つめているようである。
やがて、彼女は向き直ると大通りを横切り、雑踏の中へと消えて行った。
( 何か、気味の悪いヤツ……! )
その時は、その程度しか思わなかった。 しかし、今、想い返してみれば、その時すでにユキには見えていたのだろう。 友美という存在。 そして、自分の末路、友美の未来が……!
翌日の放課後、学校の屋上でたむろする洋子・友美たちの前に、その女生徒… ユキは現れた。
友美の義姉である笠井 洋子は、非常階段脇に立ち、階下へ降りる室内階段入口のスチールドアにもたれ掛かって、かったるそうにタバコをふかしていた。
その前に、臆する事なく立ったユキは、挨拶も無く、突然に聞いて来たのだ。
「 2年前の夏、あなたのレディースチーム『 死喰魔 』から、車が貸し出されているでしょう? 」
あらかた事情を知っているかのようなユキの問いに、いぶかしげにユキを見据えていた洋子の眉が、ピクリと動く。
無表情のまま、洋子を見つめるユキ。
しばらく間を置き、ユキは言った。
「 貸出先… 誰なの? 」
洋子の横にいた友美が、ユキの右肩に手を置き、言った。
「 ……待ちな。 いきなり何だ? お前…… 」
友美の制止を無視し、ユキは、洋子をじっと見据えたまま、無表情に続けた。
「 言いたくないのなら、それでもいいわ。 出来れば、正規に警察を介入して、刑事的に裁きを受けて欲しかったの。 拒否するなら、『 私流 』に裁かせてもらうだけだから…… 」
至って冷静な、ユキの態度。
周りには、友美を含めた、洋子の『 手下 』たち数人の女生徒が取り囲んでおり、ただでは済ませないような雰囲気だ。
……見たところ、ユキは小柄で、普通の体格である。 凶器を所持しているとも思えない。 レディースの面々を前に、どこから、その『 自信 』が湧いて来るのか……
腕組みをしたまま、口にくわえていたタバコを吹き捨て、洋子は、脇にいたみゆきに指示をした。
「 …手加減する必要、無いからね……! 」
返事はせず、面倒臭そうな表情をしたみゆき。
両手を制服のスカートのポケットに入れたまま、小さく息をつくと、おもむろにユキの眼前に出た。
見下げるような目つきで、ユキを睨む。
「 ちっ… 」
小さく舌打ちをし、ユキに歩み寄ると突然、ユキの腹部に強烈な膝蹴りを入れた。
腹部を両手で押さえ、俯くユキ。 しかし、苦しむ訳でもなく、無表情だ。
……いや、その瞳には、明らかなる怨念の情が見て取れた……!
途端、みゆきは腹部を両手で抑え込み、その場に片膝をついた。 みゆきの顔は、尋常ではない苦しみに満ちた表情になっている……!
「 …ど、どうしたの? みゆき 」
心配した友美が、みゆきの肩に手を掛けた。 その途端、大量の赤い血が、ゴボゴボと、みゆきの口の中から噴き出して来たのだ。
「 えっ…! 」
「 キ、キャアアッ! 」
周りの女生徒たちからも悲鳴が上がる。
やがて、みゆきは屋上の床に倒れこみ、自らの血溜まりの中で数回、痙攣した後、動かなくなった。
「 ……」
思い起こされる、凄惨な記憶……
その後、みゆきの惨状に慌てる洋子たちにを尻目に、いつの間にか姿を消したユキ。 洋子は、ユキを探して連れて来るように、加奈子に指示を出したが、その加奈子は数時間後、電柱の昇降用クイに、背中から串刺しにされて絶命している姿で発見された……
一体、どうやって、地上から数メートルも上の電柱のクイに… しかも、背中から串刺しにしたのか……?
空を見つめ、口を開けたまま、少し顔を右に傾かせて息絶えていた加奈子。
胸の前に飛び出た昇降用クイを、両手で握り締めたままだった……
脳裏に蘇った、封印していた凄惨な記憶。
友美は眉をしかめ、小さく、ため息を吐いた。
何も知らない当時は、ただ恐怖に怯えるしかなかった。
しかし、『 力 』の存在を知った今、落ち着いて状況を分析出来る。
……ユキは、物体を自由に操る、恐るべき『 力 』を得ていたのだ……
( 私と、同じだったんだわ…… )
友美にとって、恐怖の象徴でしかなかったユキ…… しかし、全てを知った現在の友美にとっては、不幸な過去を背負い、孤独な死に方をする事しか出来なかった哀れな同胞として、その記憶は置き換えられようとしていた。
( 4429Fの力に、自我を乗っ取られる前のユキと、話が出来ていたら… )
友美は、切実にそう思うのであった。
静かな公園の雰囲気の中を歩き、多少、気持ちが落ち着いて来た友美……
左手首裏の腕時計で、約束の時間を確認する。
( ちょうど良い時間だわ… )
中央公園の南には、石舞台のような造りになっている。友美は、数段ある石段を上った。
石段を上がり切ると、100mほど奥にある石舞台まで、木立の美しい並木道が続いている。 幾何学模様のカラー歩道には、数羽の鳩が群れながら、落ちている木の実をついばんでいた。
( 南側の石碑って言ってたわね、里美 )
友美は、過去の悲惨な記憶を脳裏から振り払い、並木の歩道を公園の奥に向かって歩き始めた。
クッ、クッと、2羽の鳩が、友美の前を歩いている。 まるで友美を道案内するかのようだ。 少し微笑みながら、友美は、その鳩の後を歩いていった。
……突然、2羽の鳩が飛び立った。
その行方を目で追った友美は、何かを感じた。
( ……力だ……! )
力を持った人間の気である……!
しかも今、感じられるこの気配は、今まで仲間と出会った際に感じた、誰の気配よりも強い。
はたして、前方の木立の影から、1人の人物が歩道に歩み出て来た。
明らかに、こちらを意識している。 どうやら、里美が言っていた『 春奈 』という人物らしい。
木立の影の為、ハッキリとは分からないが、ジャンパースカートの制服を着ているようだ。 この制服は、友美も知っている。 都内でも有名な、私立の名門カトリック系女子学院のものである。
……少し、表情は暗めで、髪はダークショート。 じっと、友美の様子を窺っている。
「 春奈… さん? 」
友美が、そう尋ねた途端、彼女の周りの枯れ葉や小枝・小石が、いきなり巻き上がった。 彼女を中心に、猛烈な勢いで木の葉が渦を巻いている。 いくつもの青白い小さな放電が放射状に走り、やがて、それが彼女の一振りと共に、友美に向けて発せられた。
「 …あっ! 」
強烈な衝撃と共に、数メートル後方にあった大きな木の幹に、友美は叩きつけられた。 とてつもない大きな力が、友美の体を束縛している。
「 や、やめて…! 何するのっ… 私は… 」
彼女の束縛は続いた。 猛烈な、『 プレス 』と呼ばれている力の応酬だ。 これは、明らかに攻撃である。 …彼女は、友美を知らない。 おそらく、敵と勘違いしているのだろう。
圧倒的な束縛を加えつつ、彼女はもう1つの磁場を発生させると、これを再度、友美に向けて発した。 今まで以上の耐え難い負荷だ。 しかも、今度は、それを友美の首に集中させている。 気管が潰され、息が出来ない。 首の血流も止まり、段々と意識が遠のいていく。
( 殺されるっ…! )
いつの間にか、彼女は、友美の目の前に来ていた。
「 ……無防備ね。 それが、あんたの命取りよ……? 」
冷めた、無表情なその目。
殺人者の目は、こんな感じなのだろうか。 あの時のユキと、まったく同じだ……!
「 苦しい…? ごめんね。 今、頭を潰して楽にしてあげる 」
友美の頭部に、更なる負荷が掛かった。 ミシミシッと、頭蓋がきしむのが感じられる。
< …やめてッ! >
一瞬、青白い閃光が走り、ドーンという落雷のような音と共に、友美が背にしていた木の幹が破裂する。 彼女は、飛来して来る破片を避ける為、数歩ばかり後ろへ下がった。
衝撃で起こった薄い白煙がたなびく中に、友美が立っている。 時折、ショートするように、パチ、パチッと青白い光が、友美の体から放たれていた。
「 衝撃波で、私のプレスを破壊したのね? ふうん… 大したものね 」
別段、焦りもせず、彼女は言った。
……友美は、衝撃波の出し方も、その威力の調整法も知らない。 ただ、高潮する意識の高まりを、意図する方向・部分に向けて集中し、一気に発散するが如く無意識のうちに解き放っているだけである。
しかし…… 敵と勘違いしているにせよ、彼女の存在を感じる『 気 』には、全てを問答無用で握り潰すかのような、乱暴なモノが感じられた。 愛子や里美のように、人に対して問い掛けて来るような… 人情的な感覚が無いのだ。 従って、同じ仲間とは、極めて想像し難い。
「 ……あ… あなた、誰? 春奈さんじゃ… ない… の? 」
乱れた呼吸を落ち着かせながら、友美は聞いた 。 足がふらつき、立っていられない。
無表情なまま、友美の問いには答えず、静かに彼女は言った。
「 これ以上やって、いたずらに私の寿命を縮めたくないわ。 邪魔くさい子たちも、辺りにいるようだし… また、会う事になりそうね、友美。 でも、その時が、あんたの最期よ……?」
そう言うと彼女は、木立脇にある出入り口から、大通りの方へと消えていった。
張り詰めていた気を緩めると、途端に体中の力が抜け、友美はその場にへたり込んでしまった。 猛烈な倦怠感が襲って来る。 体中が、抜けるようにだるい。
「 友美ッ! 」
並木道の向こうから、数人の人影が駆け寄って来た。
「 しっかりしてっ! 友美、大丈夫っ? 」
愛子の声だ。
「 そこのベンチに寝かせてあげて! ほら、肩持って 」
里美の声も聞こえる。
どうにか、呼吸が落ち着いてきた友美は、ベンチに横になったまま、傍らにいた里美に言った。
「 だ… 誰だか、わかんない子に襲われたの…… いつも初対面の仲間に、迷惑かけちゃうから、まったく警戒してなかったの。 凄い力だった……! 」
里美が、それに答えた。
「 ごめんね、友美…! 話しておけば良かったね。 あいつは、熨田 浩子っていうの 」
「 …のだ… ひろこ……? 」
ハンカチで、友美の頬に付いた汚れを拭きながら、愛子が代わりに説明をした。
「 大館さんの彼女よ。 あいつも、社と組んでるの。 …ごめんね、友美。 波動を感じて、私たちも行こうとしたんだけど、浩子のシールドが強くて、近寄れなかったの。 周り一面に、誰も近寄れないように、バリアみたいなものを張る事が出来るのよ、あいつは。 友美が、プレスで使う気の力を、お碗のように変形させるの。 私たちの中で、一番強い衝撃波を出せる春奈が、強行突破しようとしたんだけど… 弾かれちゃったわ 」
「 友美さん、頼りなくてごめんね? …あたし、春奈。 沢口 春奈よ。 中学2年。 よろしくね 」
額に、うっすらと付いた打撲の跡を撫でながら、里美の後ろにいた少女が挨拶した。 都内の公立中学のブレザーを着ている。 耳を出したショートの髪型からは、活発そうな性格が感じられた。
ベンチに横たわったまま、友美は答えた。
「 …よろしく。 友美です。 こんな格好で、ごめんなさい 」
「 ううん、凄いよ友美さん! あの熨田っていう人は、社より、力が上なのよ? そのプレスを弾き飛ばしちゃうんだもの~! 尊敬しちゃうなあ~ 」
憧れのまなざしで、春奈は、友美を見た。
「 社のあとは、浩子か…… やっぱり、友美に興味があるみたいね、あいつら 」
愛子が、腕組みをしながら言った。
里美は、友美の脇にしゃがみ込むと、乱れた友美の前髪を手櫛で整え、語気を荒めながら答えた。
「 興味どころか、友美を殺そうとしたのよっ…! 信っじらんないっ! …いよいよアイツら、やる気よ? まずは、邪魔モノから片付けようって事だわ。 アイツらにとって、友美の力は、脅威のはずだもん。 私たち側に付いて、味方に出来ないと判断したのなら、ソッコー、除外対象よ……! 」
その時、全員が、あるものを感じた。
「 ……社っ! 」
「 近いわよっ! みんなっ、友美を守って! 」
里美が、友美をかばうように抱きしめた。 愛子も寄り添い、春奈も友美の側で姿勢を低くし、辺りを警戒している。
只ならぬ気配が、辺りを占拠していた……!
「 出来損ない共が、全員集合してるぜ 」
先程、浩子が出て行った公園出入り口から、不敵な笑みを浮かべながら、社が姿を現わした。
春奈が気を集中させ始める。 愛子も、春奈の力を援護するように気を送り出し始めた。
「 …おいおい、いくらオレでも、おまえら全員を相手するほどバカじゃないぜ? 話し合いに来たんだ。 そうカッカするなよ 」
「 ……友美を、こんな目に遭わせといて… よく言うわね……! 」
友美を隠すように抱いたまま、社を睨みながら、里美が言った。
「 ちょうど4人ともいるな。 へっ、まるで制服の見本市だぜ。 …よう、友美! 浩子と、ヤリ合ったんだってなァ。 どうした? もう息切れしてんのかよ 」
春奈が、友美をかばうように、前に出て言った。
「 馴れ馴れしく友美センパイを、呼び捨てにしないでよッ! アンタ、何様だと思ってんのっ! 」
「 あいかわらず、威勢がいいじゃねえか、春奈 」
ふてぶてしく社は、4人の前に仁王立ちになっている。
……少し、 社のカッターシャツの襟が、風になびいた。 足元の枯れ葉もカサカサと動き出している……
「 …! 」
社は、異常に気付いた。 春奈・愛子も、その異変に注目する。
「 …と、友美っ、あんた……! 」
里美は、抱いている友美の異変に気が付いた。 友美が、社に向けて気を発している。 しかも、それは急激に大きくなり、やがて物凄い質量と共に、社の頭上に圧し掛かった。
「 う、うおっ……! 」
社も、応戦して気を発するが、油断していた為か、防戦的だ。 少し押し返したが、友美は、更なる圧力をかけた。 ビリビリと空気が振動し、そこいら中に放電が走る。 愛子たちの誰も見た事も無いような、まさに圧倒的・暴力的とも言える、物凄い質量を持った気だ……!
「 と… 友美、そんな体で…! だめだよっ、無理しないでっ! 」
里美が叫ぶ。
「 …こ、この野郎っ……! 」
社の髪は逆立ち、額には血管が浮き出ている。 足元のアスファルトにヒビが入り、近くにあった水道の蛇口からは、水が吹き出した。
「 す、凄い……! 社を圧倒してる! 」
春奈は猛烈な気圧に、手をかざしながら言った。
「 だ、だめよ、友美ッ! やめてっ… し、神経、切っちゃうっ! 友美っ……! 」
里美は、必死に友美を抑えようとしている。
やがて、プレスに耐え切れず、社の足が曲がり始めた。 修羅のような形相で、社は、うめく。
「 調子に… 乗り… やがっ…… てエェ~……! 」
更に友美は、プレスの圧力を上げた。
空気は押し固められて熱を持ち、周り全体の景色が赤くなって来た。 ゆらゆらと、陽炎の様に景色が歪む…!
友美は、プレスの範囲を狭めて社の束縛力を高めると、もう1つの磁場を発生させ、それをプレスの上から、社めがけて投げ付けた。 更にもう1つ、合計3つのプレスで社を束縛している。 その上、3つのプレスの圧力を、全て上げた。
「 だっ… だめえぇっ! 友美っ… そんな無茶しないでっ! も、戻って来れなくなっちゃうよ! 友美っ、友美っ…! 」
里美が、必死に呼びかける。
……社には、限界が近付いていた。 自分のプレスが、友美のプレスによって崩壊させられる危機が迫っていたのだ。 もし、バリアとして使っている自分のプレスが破壊されたら、センチメートル当たり、最大1tを超えていると推定される友美のプレスで、ミリ単位まで押し潰される事となる……!
「 うおおッ…! 」
社は、叫び声と共に、最大の力を振り絞った。
次の瞬間、ドーンという大きな衝撃音と共に、青白い閃光が走り、猛烈な圧風が辺りを席巻した。 一瞬にして、周り一面が、モヤがかかったように真っ白になり、やがて不気味な程に静まり返った時の静寂が、辺りを包んだ。
「 …春奈ッ、里美! 」
凄まじい気の応酬が収まったと判断した愛子は、たなびく白煙の中で叫んだ。
「 愛子センパイ! 私は大丈夫よ! 」
春奈が、傍らで答えた。
いつの間にか、気圧が弾ける際の衝撃で、2人は木立の辺りまで押しやられていた。
「 ……友美は? 」
愛子がメガネを掛け直し、ベンチの方を確認すると、里美が、友美をしっかり抱いたまま、その場にいるのが見えた。
愛子たちの方を振り返り、里美が声を掛ける。
「 愛子、春奈! ケガない? 」
「 大丈夫よ! …と、友美は? 」
「 ……友美っ、私よ、わかる? 里美よ! 」
里美が、抱かえていた友美に話し掛ける。 友美は、里美の腕の中で虚ろな目をしながらも、しっかりした意識を持っていた。
「 捕まえようと思ったんだけど… 破壊されちゃった……! 話し合いって言ってたけど… そんな意志、全然感じられなかったもの。 殺気の塊みたいな…… それに、近くに、さっきの浩子さんの気のようなものも感じたし 」
愛子と春奈が、駆け寄って来る。
「 凄いっ! 凄いよ、友美センパイ! あの社が、逃げてったよ! 」
春奈が、我が事のようにはしゃいだ。
「 こんな大きな気同士の勝負、見た事ないわ…! あいつ、プレスに耐え切れないと見て、衝撃波を使って来たわね 」
愛子が、友美の制服に付いたホコリをはたきながら言った。
「 まさか、こんなに友美センパイがコントロール出来るようになってるなんて、思ってなかったんだよ! いい気味よ 」
春奈が、自慢気に言う。
友美の頬に付いた枯れ葉の破片を、指で払いのけながら里美が言った。
「 あいつら、しばらくは来ないから安心して、友美。 衝撃波は、かなりの肉体的ダメージを受けるから… しかも、今の衝撃波は、アイツにとっても最大級クラスだったろうし 」
「 ……心配かけて、ごめんね。 里美の声、聞こえてたよ…? 私、どこかに弾き飛ばされそうだったけど… 里美の声の方向に、しっかり意識してたから、大丈夫だったよ 」
里美は、抱いていた友美を、更に強く抱きしめながら、涙声で言った。
「 友美……! 暴走して神経切っちゃったら、どうしようかと思ったよ。 もう、無茶しないでっ……! 」
自分の身を、心から心配してくれる仲間のありがたさが、友美には、たまらなく嬉しかった。
「 ありがとう。 これからは、みんなが入って来れるように、後ろの気を開けておくね… 」
「 さすが友美センパイね! もう、そんなコントロール出来るんだ。 しかも、さっきは3つのプレスを同時に使ってたよね? 凄ォ~いっ! 」
春奈が、感動したように言った。
「 浩子さんや、社って子が、私にした事よ? 真似たり、応用しただけ… 」
「 友美センパイ、そういうのを成長って言うのよ? 」
人差し指を立てながら言う、春奈。
友美は、やっと落ち着いて来た呼吸を整えながら、言った。
「 …この力…… 使わなくてはならないのであれば… 仲間同士での争いには、使いたくはないわ。 もっと、こう… 他の人の、未来の為に役立てたい…… 」
「 友美センパイ……! 」
「 …さあ、今のうちに友美連れて帰るわよ。 ちょっとハデな音がしたし、また警察なんかが来ると厄介だから……! 」
愛子が、辺りを見渡しながら、皆を則した。
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