儚くも美しい世界を、二人のダメ人間が闊歩する
- ★★★ Excellent!!!
私は、バディものが大好きです。それも、どちらかに主導権があるのではなく、パワーバランスはあってもあくまで対等で、その根底に損得なしの友情が垣間見えるバディが、大好きです。
この物語の主人公、大久保と関はまさにそれです。大久保は、アル中の内省的な怖がり。関は、人の心がわからぬ快活な切れ者。パッと見ると、関が大久保に対して上から目線だったり、大久保が関に対して卑屈だったりしても良さそうなものですが、それはない。関は大久保の弱味を握っているし、大久保は関を邪険にしているけど、二人の関係はフラットです。
だから、この二人が話しているところを見るのは楽しくて、例え状況が恐ろしいものだとしても、二人にいれば大丈夫だろうという安心感で、読み進められるのだと思います。
また、お話自体も完成度が高く、流麗な筆致は怪談特有のこの世ならざる美しさや儚さを十全に表現しています。
そして、その世界を闊歩する二人を見ているのが本当に楽しい。
恐怖は控えめ。怪談の切なさや美しさを味わいつつ、愛せるキャラの掛け合いをみたい人には、手放しでおすすめです。