大正風味と不思議のダンジョン、化学反応は想像を越える

本来ならば、絶体に噛み合わないはずの要素が噛み合い、それゆえに面白い。大正風味が好きな人はダンジョン探索系に興味を引かれるだろうし、ダンジョン系が好きな人は大正風味に興味が出るだろうと思える、そんな怪作です。

なんといっても、まず目を引かれるのは大正感が非常に強い文体。良い意味で「似非大正」といった空気なので、太宰とか芥川とかそういった堅い文章にに目を引かれる人はどんぴしゃりだろうし、かといって「そう言う文体が読みにくくて……」という人にも進められるくらいの読みやすさ。まずは、この奇跡のバランスを楽しむためだけに読んでも良いと思います。

ただし、当然ギャップ感による笑いもある。<プリースト>のルビには思わず笑いが零れること請け合いです。まずは、「亡者に寄せて」まで読んでみてはいいのではないかと。

<ダンジョンがある日本>という、異世界探訪物としての面白さもたっぷり詰まっていて、ある層にしか響かないだろうけど、ある層の敷居が広い今作は、万人向けと言って良いと思います。

まずは、一読。そう言うしかない読み味です。

その他のおすすめレビュー

無知園児さんの他のおすすめレビュー41