迷宮雑感〜或る作家によるダンジョン探訪の記
佐々木匙
潜ると言う事
私は何度も断るつもりでいたのだが、
仕様がないのでこうして臭気に
今しがた
ただし、先生、
さて、怪物の接近が遅く、或いは毒等を持った危険生物であった場合はどうであろうか。そこに魔法が役立つ。今ひとりの傭兵、冴子嬢は魔法の得手である。遠くに認めた
この冴子嬢、モダンな
これらの戦闘の間、私が何をしていたかと言えば物陰に隠れ、息を殺して目ばかりは
地下に出ると言うと
そうして半ば引っ張り回されているうちに、やがて足元は、ずるずると湿った苔と土と石の
そこには、ごく
これは祈りの部屋と言って、一階層にひとつある、大事なところです。ここで祈りを捧げることで、探索者は傷を癒し、さらに進む事が出来るのです。冴子嬢が小声で言った。その様子から、この場が彼らにとり、重要なだけでなく神聖なな物なのだと言う事が察せられる。ああ、触れてはいけませんよ、と言うので私は手を引っ込めた。
そうして彼らは祈りを捧げる。何に対してか? それは、彼らにもわからぬのかも知れぬ。
それで良いのかは果たしてわからぬ。わからぬなりに、彼らの哲学の一端に触れた気になり、私は気が大きくなった。それで、この石は誰も持って帰らないのか、などと聞いて二人に酷い目で睨まれた。この場は公共のものである事、そもそも何らかの力により石を動かすは叶わぬ事を教えられた。私は更に恥じ入った。
編輯が用意した道筋はそこまでであった。探索者にしてみれば初心中の初心向け、鼻歌を歌って帰る事の出来る程度の道程であったろう。私にとっては何度も身を竦める恐怖の道筋でもあったが。少しは慣れた筈の帰りすらそうだった。ごく小さな
それで、帰り着いてこの原稿を書いていると、編輯が家にニヤニヤとやって来て、先生、如何ですか。今度は
一度、地下にふっと小さな黄色い花を見つけた。
私はあの花に、彼ら地下に生きる者達の誇りの様な物を見る。それは、徒らに他所人が足を踏み入れ、汚す物ではない。あなた方はひょっとして笑うかも知れないが、きっとそうなのだ。
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