逢山先生遁走録
私が
二階層もほぼぐるりと回る事が出来るようになり、私は
兎に角武器を構えながら後ろに下がり、出来れば
さて、三階層はこれ迄と少々勝手が違います、と高見君が改めて切り出した。何が違うのか、また違う種類の怪物が出るのか、と話を聞くと、まず先生は駆け比べは
「馬鹿にして貰っては困るね君。中学校の頃は運動会では常に首位を獲っていたともさ」
「それは何よりです」
「後ろから数えてだがね」
冴子嬢が肩を震わせ、高見君は曖昧な笑みを返してくれた。実に心根の温かな青年である。
「次の階は、敵性の物は少ないですが、厄介な大物が出ます」
亀です。高見君は真面目な顔をした。
私の中では、亀と言うとモシモシ亀ヨの亀さんである。幼少の
彼が言うにはこうだ。三階層には大きな水場が存在し、そこには主が如き
「水から出れば、それは、恐れる程速くはありません。だが、水場の側を通る分には危ない。陸に誘導しますから、出来る限り速く我々に付いて来て頂きたい。倒すなどとは考えない様に」
亀の甲羅は勿論、皮膚ですらもごく硬く、剣を通さぬらしい。改めて生命の危機を感ずる事
そうして、さあ
近い、急ぎます。高見君が言うや否や、二人は水場を横切る様な通路を走り出した。私も一呼吸遅れて追う。高見君は
背後で水が爆発するかの様な音が立った。
何が亀さんか。何が銭亀か。醜悪に膨れた緑の顔。肉に埋もれる様に、
こちらです、と冴子嬢が私の腕を引く。通路を過ぎればやがて水場を離れ、広い陸地に辿り着く。そこまで来れば亀の動きは鈍り、更に狭い場所まで行けばあの図体が通る事は叶わぬ、と言う訳だ。
私は渾身の力を込めて走り抜け、やがて壁のある安全なる地帯に辿り着いた。陸の半ばまで上がった亀が獲物の姿を見失い、緩慢に辺りを見回していた。大きな安堵の息が漏れる。同時に編輯への恨みの言葉も幾つか漏れた気もする。
どうやら迷宮内にはあの様な、倒すには余りに巨大で厄介な怪物も存在するらしい。私は遁走の専門家であるが、出来る事なれば全力の疾走は遠慮をしたい物である。
さて、そこからが少々愉快であった。亀から遠ざかると、高見君が
見ると近くの地面には黒く焦げた火の跡が見える。どうやらこの釣り場は、
魚は、鮎に似て身が締まり淡白で、塩の味が良く似合った。
モシモシ亀ヨの亀さんは、あれはどうにか兎に勝つ位であったから、陸に暮らす亀であったのかも知れない。例の巨大亀は、
迷宮で魚を釣り上げてからは、何だか釣り堀でも掛かりが良くなった様に思える。
だが、やがて、またもや嗅ぎつけられたか編輯が水場をやって来て、太公望は廃業を余儀無くされる。私は遁走の専門家であるが、彼の手から逃げ果せた事は、
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