灰の跡
蛙を食べた事は
「舌が痺れたら危ないですから、
「もう少し安全な物を食べたい所ですけどね。食糧が少ない時は、こうして自給自足します」
ふたりは慣れた物で、もぐもぐと
「まあ、ここはまだ良い方ですよ。四階で空腹になった時は酷かったです。高見が……」
冴子嬢は嫌な顔をする。まさか、
「……
「虫はいけるだろう」
「いけません。駄目。絶対に嫌」
軽い言い合いを始めるが、まあ、挨拶代わりの様なものか。私は蛙の三串目を平らげる。今の所毒の影響は無いようだ。我を苦しめし
さて、その日、そう言った簡易休憩所のひとつに向かった時、高見君はおや、と足を止めた。何かあったか、と見渡してみるも、周囲は綺麗な物である。ただ、地面に焦げ跡のみが黒い。
何かあったかね、と聞くも、いえ、気の
「何か変です。普通、火の跡はもっと汚くなっている
尋常の探索者はもっと行儀が悪い、と言う事らしい。確かに、言われてみればどこも木切れやら灰やらで散らかっていた様にも思える。
「
「まあ、それなら良いのですが」
ちら、とふたりの目が見交わされた。彼らはもう付き合いが長いそうであるから、こう言う時には少々の疎外感を覚える。致し方なし。
その日は、それからも妙な事が続いた。斃された
「銃創です」
恐らく、と冴子嬢が付け加える。
「この狭い場所で、弾の跳ね返りも起こさずに
高見君の声に緊張が走った。私は、少しばかり事態を把握し出した。つまり、何か異質な事が起こっているらしいと、それだけだ。
そうして、その日はそれで終わって仕舞った。我々はまた
次の探訪時、私達はまた簡易休憩所で蛙の肉を焼いていた。塩と柚子胡椒の取り合わせも中々に美味である。辺りは相応に小汚く、灰とそこに残された足跡が目立つ。
「あれから、この階ではおかしな事は起こってはいない様です」
次は醤油だれでも作って来ましょうか、等と言いながら、高見君は私に報告をしてくれる。
「変わった死体や
「彼らは何だい」
ふたりは押し黙る。銃を装備した、規律正しい、熟練の探索者。私は少々考えを巡らせ、何も言わぬ事とした。ただ、ある種の予感のみは残った。
私は冷めた蛙の串焼きを家内と
「中々美味いが、冷めているのが残念だ。出来立てを食べてみたい物です」
「君も来給えよ。一緒に
「それが、喘息でして。医者から
「どんな医者だね、それは」
ふと思う。あの休憩所で、謎の探索者達は蛙を食べたろうか。食べたのならば、どう思ったろうか。
もし、味気ない、七味があれば、等と考えていたのであれば、良いと思う。私は七味を手ずから分けるに
「ううむ、これは
編輯の感想に私は、あの狭い休憩所で、ワイワイガヤガヤと探索者達が集まり、豪気に乾杯を行う、そんな夢想を浮かべた。
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