幸せってなんだろう?――エンタメだけれど考えさせられます。

  • ★★★ Excellent!!!

※ネタばれになっている箇所があるかもしれません。本編を読まれていない方は目を通さないようお願いします。

一人のしがない占い師に突如訪れた「運命」を12星座と絡ませて描いた作品です。ジャンルで言えば「ファンタジーを題材にしたサスペンスタッチのミステリー」といったところでしょうか?(意味不明)

まず、親しみが感じられる、まるで作者を彷彿させる主人公(笑)による軽快な語りに導かれてストレスなく読み進めることができます。前半のフラットなストーリーがは気持ち長い気はしますが、だれてしまったり飽きたりすることはありません。

個人的な感想で恐縮ですが、最初は主人公が「押し付けられた」能力についてモヤモヤしながら読んでいました(笑)正直なところ、自分が彼の立場だったら納得がいかないと思いました――平気でそんな重い物を「よろしく」なんて押し付ける人の気がしれませんでした。そこに大義名分があれば納得できたのですが。例えば、世界を守るとか、大切な人を守るとか……

でも、後になるにつれ、少しずつ感じ方が変わっていきました。主人公の性格もあるのですが、そこが本作の本作らしいところ。そこらに転がっているワンパターン小説とは違うところなのです(笑)

閑話休題

どんな展開になるのか全く予想がつかない中、物語が動きます。まさかそんなスゴイ裏があったなんて……唐突と言えば唐突ですが、思わず「おーっ」となりました。そのまま怒涛の展開でラストまで一気に突っ走ります。はっきり言って目が離せません。

ラストは、どこか寂しいような消化不良のような不思議な感覚が残りました。それは、冒頭で感じた「個人的な蟠り」のせいなのかもしれません――ただ、それはあくまで極めて個人的な感想であって「作品が評価に値しない」と言っているわけではありません。

すごく惹かれました。時間が取れなくて一時リタイアしましたが、先程一気に読みました……いえ、読まされました(笑)エンタメ作品として独創的で秀逸な作品だと思いました。前述した批評も決して悪い意味ではありませんので誤解しないように(震え声)

エンディングを目にした100人が100人とも「これは100%のハッピーエンド」と感じる作品も悪くはないのですが、「幸せってなんだっけ?」とその定義をもう一度考えさせるようなエンディングもまた一興だと思います――幸せの形は決して1つではありません。TPOによっても様々ですし、読み手の性格や置かれた環境によっても真逆の見解が出るかもしれません。

このエンディングだってハッピーエンドなのです。予定調和の範疇に収まらず、主人公の環境を見ると「100%幸せ」なんてとても言えませんが、運命の中で自分にできる策を講じ、結果としていくつかの不幸せを幸せに変えることができたのですから――カッコよく言えば、大切な人を守ったってことでしょうか。それに……ボクの蟠りを払拭してもらえるような一文(将来主人公の症状が回復するようなくだり)も追加してもらったし。ボクがあまりにもうるさいから(笑)

それは冗談として……長い間、お疲れさまでした。
素晴らしい作品を楽しませていただくとともに、キャラ立てや表現方法など、たくさんのことを勉強させてもらいました。エンタメなのに考えさせられる作品にexcellentです!

RAY

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