当たるも八卦、当たらぬも八卦。いや、そんな悠長な占いでは無かった。
〇か?×か?YESか?NOか?全身全霊を掛けた究極の二択。
回答率100%の占いには訳があった。
これは、天涯孤独なフリーターが見知らぬ人と巡り会い、不思議な占いの能力を使う物語。
それは神から贈られた能力=「ギフト」。それは「賢者の手」という摩訶不思議な能力。
その力を巡って、主人公は何を語るのか?
流されるままに現状を受け入れ、天涯孤独だった人生に、唐突に人のふれあいと温かさを感じた一茶。しかし、与えられた不思議な能力には代償が必要。何を得て、何を失うのか? まさに等価交換。お金とモノの関係同様に、現代ではお金で物を交換出来ますが、本作では情報を体の一部で交換するとしたら?
自らの体の一部を提供する程の信用と信頼はどこからくるのでしょうか?
様々な思惑からの欲望と執着。失意からの希望と温かな人との交わりに、最後の賭けに奇跡は起きるのでしょうか? 人の闇を照らすのは、やはり愛情なのでしょうか?
緩急のあるストーリーに自分ならどうするのか? 考えてしまいます。
「自己犠牲」の精神は怒涛の如く淡く悲しいラストへと誘いますが、どんでん返しのハッピーエンドに心救われ安堵します。
物や、幸せの価値観とは、一体どこで線引きがあるのでしょうか? 自分自身にとって大切なモノとは? ふと考えてしまいました。
二択の質問であれば、100%当てられる。そんな占いの能力がある日手に入ったら?
昼間はフリーター、夜は占い師という、どちらかというとあまり目立たない半生を送ってきた男性が、ある日突然外国人風の女性に呼ばれて、ある老婦人のもとに連れて行かれるところから、物語はスタートします。
その老婦人は、占いは占いでも、YesとNoで答えられる質問なら、確実に正解を導ける能力を持っていて、それが主人公に引き継がれ、人生は一変します。
最強な能力ですが、稀有な力は、否が応でも周りの人たちの人生を、良い意味でも悪い意味でも狂わせます。さらにこの能力には恐ろしい秘密が……。
そんな諸刃の剣を抱えながら、真摯に向き合っていく主人公の生き様。
息もつかせぬジェットコースターのような展開もあり、物語の渦に読者は巻き込まれるでしょう。
全体的に、何というのか、穏やかそうに見えて、実は裏に恐怖が潜んでいるようなおどろおどろしい雰囲気が流れていて、まるで読者も占いにすがりたくなるような闇の醸し出し方が絶妙です。
それでいて文章は非常に読みやすく、ストレスなく読める筆致も素晴らしい。
あと各章のタイトルに、占いを想起させる黄道十二星座が含まれているのも上手いですね。
最後の最後まで楽しく拝読することができました。
長編ですが長すぎず、そして物語に引き込まれ、あっという間に読んでしまいました。
めちゃめちゃおもしろいです! オススメします!
提示された問いの、二択の選択肢のうち、必ず正しい方を知ることができる力を得たとしたら。
使いようによっては、どんな富や権力も手にすることができるかもしれません。
だけどその力を行使するたび、自らの五感を少しずつ失っていくとしたら?
これは、そんな不思議な力を継承してしまった、一人の青年の物語です。
穏やかで、どことなく諦観の漂う語り口。
それとは裏腹に、主人公・一茶の運命は大きな奔流に呑まれていきます。
何も持たない天涯孤独の身だった彼が手にした、あまりに大きな力。
多くを失ううち、彼は自分自身を犠牲にしても良いと思えるものを見つけるのですが——
様々な思惑が行き交う中で、緩やかに繋がっていく人の温もりが、わずかな希望のように思えました。
特別な力なんかなくたって、ありきたりな幸せが手元にあれば十分なのに、それすらも難しい。
クライマックスで一茶が選んだ答えと覚悟に、涙が滲みました。
本当に大切なものは何なのか。
じわりと心に沁み入ってくる物語でした。面白かったです!
人から人へ受け継がれる絶対的な未来予知の能力。
町の路上で占い師をしていた主人公は、その能力を手に入れてから人生が一変する。
プロローグで物語の始まりを予感させ、そこから主人公の日常へと切り替わる。そこから主人公が能力を手にするまでの過程、その後に関わることになった様々な人々との生活。
それらすべてがクライマックスに向けた下準備になっており、物語の流れがとても丁寧に描かれています。
主人公の気持ちの移り変わりにも唐突さが一切なく、作者さまが主人公の行動の動機付けをとても大事にしているというのが伝わるので、とんでもない代償を背負ってもで行動を起こす主人公にすごく納得し、共感できるのですね。
読後感もよくて、洋画1本見終わった後の満足感を味わえました!
当たると思うも、当たらぬと思うも、あなた次第。それが占い。だがもし、絶対に当たる占いがあるとしたら……。
辻で占い師をしている一茶は、ある日運命の出会いをする。それにより彼は「ギフト」すなわち超常的な能力を手に入れる。それは、絶対に当たる占いの力『賢者の手』だった。
家族も財産も、何も持たない一人の若者が、ある日突然超常能力を与えられ、その生活は一気に変容する。高い収入、豊かな生活、そして彼を信頼してくれる人たち。
しかし、彼が与えられた能力は、必ずしも彼を幸せにするものではなかった。
いっけん価値がありそうに見えた絶対に当たる占いだが、その力は彼からいろいろな物を奪っていった。彼は確かに「与えられた」。だが、「奪われた」ものはより大きかったのではないか?
物の価値観、幸せの意味。
そして、人ひとりの人生など小さなものだと嘲笑うかのような超常能力『賢者の手』。
彼は果たして持たざる者なのか?
重いテーマを、読みやすい平易な文章で軽妙に描き切った本作。軽く読み切るもよし、深く考えるもよし。その答えは読んだ人に委ねられているようです。
フリーターをしながら占い師業を営む主人公・一茶は、控えめながら芯のある人物。
授かった『賢者の手』はその能力を行使する代償は決して生易しいものではなく、諸刃の剣そのもの。しかし一茶はその力との向き合い方を人生を通して、見出してゆきます。
大きな流れに飲まれるようにして人生が流転していく中で、一茶とその周囲の人たちが危機に陥り、やむを得ず一茶は繰り返し『賢者の手』を合わせることになります。
それを切り抜けることが出来たのは、『賢者の手』の力だけではなく、一茶の『機転』。『能力』は使いようなのだと思わせてくれる秀逸な展開でした。
個性的なキャラクターに囲まれる一茶は一見地味にも見えますが、日常の中でささやかな幸せを見つけるという本質的な才能を持っています。だからこそ、『賢者の手』の力の代償が何とも痛ましい。
この物語を読めば、私達が持って生まれた五感も、生きていく上での『才能』であり、幸せを噛みしめる為の『贈り物』なのだと、しみじみと感じることが出来ます。
小林一茶という男のある種のサクセスストーリーと言ってもいいかも知れません。
彼は普段はコンビニのバイト。
夜になると占い師の仕事。
ある日、あやめさんという高齢の女性から不思議な力を授かる。
かくして一茶の波乱万丈の人生が始まる次第。
その力はとても便利なのですが代償が伴います。
その力を使うべきかどうか、事あるごとに悩む一茶。
彼の選択は皆を幸せにするのでしょうか。
一茶を取り巻く人々も魅力的。
美女エレイン。
社長のマック。
占いの師匠の松尾先生。
そしてギフトを授けてくれたあやめさん。
いずれも一茶に大きな影響を与えていきます。
不思議な力、能力、才能。
一茶は使いこなせるのでしょうか。
変に無双せずにトラブル解決に懸命な一茶、好感が持てる主人公でした。
必ず当たる占いができるという力を秘めた賢者の手を引き継ぐことになった主人公の一茶。元々占い師だった彼は、自分の人生に何かがあると予見していたが、その予見は思わぬ形で一茶の運命を変えていった。
といった感じで始まる本作品の見所は、賢者の手の力を受け継いだ主人公一茶の波瀾万丈なドラマです。
絶対に当たるという占いの力ですが、その代償として人間の感覚を失うというリスクがあり、そう何度も使えるわけではありません。さらには、占いの答え方にも制限がある為、淡々と問題を解決していくストーリーになっていないところがキーになっています。
また、主人公の一茶が妙にクセのある人物であり、およそ絶大な力を手にした者とは思えない思考を見せます。そのあたりが上手くストーリーに反映されており、一筋縄ではいかないキャラクターたちとのやりとりにも味を出させています。
後半は怒涛の展開が続きますが、しっかりと伏線も回収されており、賢者の手が導くラストはなんとも哀愁さえ漂うような感慨深いものになっています。
テンポよく展開していくタッチとストーリーは心地よく、一見複雑そうな背景も苦にならずに理解できる点は今回も健在でした。
絶対に当たるという力を受け継いだ男が旅したドラマ。ぜひ皆さまにも、その結末に立ち会っていただけたらと思います!!
本作を読了したとき、私は震えていました。
その経緯について、幾分か語りたいと思います。
誰が気付くでしょう。
先ずは、サブタイトルの秘密です。
乙女、カニときてラストは双子です。
その上、全て六文字で表しております。
もう、拝読させていただく前から、わくわくいたしませんか?
さて、派手な爆発音もなく始まった本作、でも内なる魂の炸裂がホームに滑り込むが如く煌めいております。
主人公、小林一茶青年は、街角でかつて学んだ占いを生業の一つとしておりました。
本作は、現代ドラマのカテゴリにあり、その通りに人との成り行きを淡々と追って行く熱い傑作です。
けれども、タグにあるように、異能やファンタジーの要素も取り入れ、現代ファンタジーとしても、また、拝読して感じました推理物としてもカテゴライズされてもおかしくない王道を行くものだと思いました。
最初の事件は、最重要人物、大会社の偉い方でありながら、矜持をしっかりと持ち合わせているあやめさんの元へ、一茶くんは彼女の娘であるエレインを介して連れられて来ました。
そこからは、二人だけの極秘のできごとです。
なにせ、あやめさんもすこぶる的中率を誇る占い師だったのですから。
大きな選択肢が迫って参りました。
一茶くんが、あやめさんの特別な占いの能力を引き継ぐか。
ギフトの正体は、驚くべきものでした。
それから、経済という世界がとても面白く描かれていました。
毎日沢山の新聞を読むこと。
それらをベースにした上で、あの神業がなされるのでしょうか。
そう、『賢者の手』です。
この能力の使い方によっては、身を滅ぼして行きかねません。
いえ、命懸けです。
それは、美味しい汁には毒も入っていると言う訳で、大きな力を得る代わりに、失うものがあったのです。
だからこそ引き立つのですが、本作のデザインがとても透き通っていて好きです。
景色の色や服の様が美しいと感じられます。
何かを敏感に感じられることは、幸せなことの一つなのでしょう。
一つ失っただけでも危険な場合もありますし、苦しいでしょう。
あるとき、一茶くんがとても危険な目に遭いました。
私はどれ程哀しみ憤ったことでしょう。
優しく賢明で質素な一茶くんは、ずっと大人しかった。
がんばりましたとお伝えしたいです。
そして、彼らを紡いて来た言の葉達ですが、歯応えもよい読みやすさを兼ね備えたものです。
最初は気になった指マークですが、数話目からはいいシンボルマークに思えました。
丁度、手相占いと賢者の手とのこともありますし。
細かい所で楽しいシーンも沢山あります。
お料理のことだとか、ペットのことだとか。
所謂ラグジュアリーな感じの虚無感とか。
ベクトルはいつも最適でした。
ああ、私はこの中の人々に友愛を感じていたのだとそっとラストページを閉じたのです。
所が、本作を作者さまのご意向で編成をなさり、『プロローグ』と『エピローグ』が追加されておりました。
『プロローグ』は、とてもいい伏線になったと思います。
そして、『エピローグ』は、後日談をより深めております。
水槽で年月も感じ取られる工夫、そして、彼女達の成長も大きく楽しめます。
すき焼き、いいですね。
私も一文字ずつ拾って、ご馳走になりました。
愛情がこもっていて、美味しかったな。
そして、本作を締め括るラストへの柔らかな流れがとてもあたたかいと感じます。
素敵な出会いをありがとうございました。
是非、一茶くん達に会いに来てください。
最初から最後まで、とても面白い物語でした。
序盤は謎だらけなのですが、少しずつ秘密が明かされてゆきます。
それとともに驚くような展開が続き、読めば読むほどに止まらなくなります。
ストーリー自体も面白いのですが、作品の雰囲気がかなり独特で、そこがまた興味をそそりました。
この作品は「占い」という珍しい題材を扱っています。
主人公はしがないフリーターなのですが、副業で手相占いをしています。
駅のガード下に机を置き、やってきた人を占うのです。
この時点ですでに自分の知っている日常とはかけ離れていて興味をそそるのですが、ここからさらに主人公の生活が一変します。
彼はある日突然、「絶対に当たる占い」の能力を受け継ぐことになります。
もし実際にそのような能力を得たら、おそらく多くの人がお金儲けなど自分の得になるようなことに使うでしょう。
ところが、この作品の主人公はとにかく無欲。
メダカを大切に飼っていたり、自宅の狭いベッドが落ち着くような人。
「賢者の手」についての知識が少ないこともあり、私腹を肥やすために能力を利用しようなどとは思いつかない人です。
そんな主人公が、どのような理由で力を使うことになるのか。
占いの結果を知った周囲の人間がどう動くのか。
そして、実は占いの力に恐ろしい代償があることがわかります。それを知ってもなお、彼は能力を使い続けることになります。
このあたりの流れは、読んでいてとてもハラハラしてしまいます。
そして、最後に彼が占った内容とは。
文学作品のような雰囲気がありながら、とても親しみやすく読みやすい文章でした。
それでいて、独特のリズムがあり個性的。
緻密な描写、ユーモラスなシーン、はっとする言い回しなどがあり、作中でそれらの文章と出会うたびにドキドキしました。
描写もリアルで、その場の空気を感じられる文章でした。
個人的には主人公が羊を数えるシーンが好きです。
作中に何度か出てくるのですが、眠れない夜は描写が違っているなどの細やかさが良いのです。
一人称という形式がとても効果的に使われていると思います。
世の中には主人公目線の物語がたくさんありますが、観察眼(占い師という職業によるものでしょうか)と、おそらく彼の性格からくる言葉選びのセンスが素晴らしいです。
また、エピソードタイトルがとても洒落ています。
その意味に気付いたとき、作品を読むのがより一層楽しくなりました。
「乙女」から始まり「双子」で終わっているところがとても素晴らしいです。円が綺麗にとじた感じがします。
タイトルの『賢者の手』もすごく好きで、この言葉選びの秀逸さに惹かれて読み始めたくらいです。
キャラもそれぞれ個性的で、一人一人の行く末が気になるほどです。
特に主人公の一茶は親しみが持てて共感しやすい主人公でした。
そして序盤では彼が読者に話しかけているような感じがあり、そこがまた面白かったです。まるで少しずつ一茶と仲良くなっているようでした。
読者と友達になれる主人公、強い。
そして彼は底抜けにいい人なのです。
彼が「賢者の手」の能力を使う理由についての説明がたびたびありますが、彼の境遇を思えば切なくも納得してしまいます。
なにより、面倒くさい、疲れると思いながらもマックの面倒をみてあげるところがいい人だなと感じます。
文章、構成、キャラクターなど、どれをとってもかなり高い筆力を感じる作品でした。文句なしのおすすめ作品です。
作者様は他にもいくつもの作品を投稿されていて、そちらはまた少し雰囲気が違うらしいので、読むのが楽しみです。
主人公一茶は日常の些細なことに幸せを感じられる人間です。美味しい食事を作ることを好み、メダカを可愛がり……そんなごく普通の人間が手に入れた賢者の力。1つの会社の運命を、多くの人の運命を変えるほどの大きな力。使うには代償を払わなくてはいけません。あなたはそれでもその『力』を使いますか?
着眼点がとても面白いと思います。必ず当たる占いって私はないんじゃないかと思っているのですけど、この世にそんなものがあったらどうするのかなあ、と。これまでの人生を占いで決めたことはないのですけど、ちょっと賭けてみたくなりますよね。
占いって人を幸せにするためのものだと思うんです。結果が良いことであれ悪いことであれそれを糧に人生をより良き方向に進めていく。
一茶はそのためのお手伝いをしているのではないかなと思いました。
文章もとても読みやすく面白いです、楽しい時間を過ごさせて頂きました。
さて一茶の運命はいかに?
人が時に思い描く「もしも」を叶えてくれる作品じゃないかと思います。
占い師を営む主人公、小林一茶は親を亡くしバイトをしながら慎ましい生活を送る穏やかな青年なのですが、ひょんなことから出会った老女から未来を見ることができる力を受け渡されます。
そしてその力で、投資や株の運用に関する未来を見る仕事に就くように持ち掛けられるのですが……。
野心や我欲というものからはかけ離れていて、他の人の頼みを聞いてあげるばかりの主人公。
舞台は現代的なのですが、彼自身は昔話に出てくる正直者のように朴訥とした今時珍しい青年です。
そんな彼を周囲の人々は過酷な運命に巻き込んでいくのです。彼らが「助けてほしい」「困っている」と善意の被害者として主人公を追い込んでいく様に切ない気持ちにさせられました。
そしてそれは最後に彼にとって大切な人々を巻き込む大きな事件につながっていきます。
どんな目にあっても一貫して自分の運命を受けとめる主人公の姿に川の激しい流れに翻弄される一枚の葉を目で追うかのように先が気になって、最後まで物語を読み進めてしまいました。
活発な主人公ではありませんが、感情移入して楽しむことができる物語でした。
僕で語られる物語は、とても優しくとても切なく。
けれど、とても愛にあふれた物語でした。
自分がついていないことを自覚しつつも、それに悲観することなく僕である一茶は日々を歩んで行く。
公務員である先輩に教わった占いとバイトで生計をを立てていたある日、とんでもない力を手に入れることとなった。
けれど、力には引替えとして自らの何かが対価とし奪い取られていく。
それでも彼は悲観することなく、その力を周りのために使い続けていった。
その結果、ほぼ全ての感覚を奪われてしまうのに、それでも彼は最後に笑う。
この物語には、人の心強さが描かれている。
誰かのために願う愛が描かれている。
是非、ご一読していただきたい。