その力は彼をたしかに豊かにした。だが、幸せにしたかどうかはすこし怪しい


 当たると思うも、当たらぬと思うも、あなた次第。それが占い。だがもし、絶対に当たる占いがあるとしたら……。

 辻で占い師をしている一茶は、ある日運命の出会いをする。それにより彼は「ギフト」すなわち超常的な能力を手に入れる。それは、絶対に当たる占いの力『賢者の手』だった。

 家族も財産も、何も持たない一人の若者が、ある日突然超常能力を与えられ、その生活は一気に変容する。高い収入、豊かな生活、そして彼を信頼してくれる人たち。
 しかし、彼が与えられた能力は、必ずしも彼を幸せにするものではなかった。

 いっけん価値がありそうに見えた絶対に当たる占いだが、その力は彼からいろいろな物を奪っていった。彼は確かに「与えられた」。だが、「奪われた」ものはより大きかったのではないか?

 物の価値観、幸せの意味。
 そして、人ひとりの人生など小さなものだと嘲笑うかのような超常能力『賢者の手』。
 
 彼は果たして持たざる者なのか?
 重いテーマを、読みやすい平易な文章で軽妙に描き切った本作。軽く読み切るもよし、深く考えるもよし。その答えは読んだ人に委ねられているようです。


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