日常にささやかな幸せを見出す占い師が両手を合わせる時、それは見える

フリーターをしながら占い師業を営む主人公・一茶は、控えめながら芯のある人物。
授かった『賢者の手』はその能力を行使する代償は決して生易しいものではなく、諸刃の剣そのもの。しかし一茶はその力との向き合い方を人生を通して、見出してゆきます。

大きな流れに飲まれるようにして人生が流転していく中で、一茶とその周囲の人たちが危機に陥り、やむを得ず一茶は繰り返し『賢者の手』を合わせることになります。

それを切り抜けることが出来たのは、『賢者の手』の力だけではなく、一茶の『機転』。『能力』は使いようなのだと思わせてくれる秀逸な展開でした。

個性的なキャラクターに囲まれる一茶は一見地味にも見えますが、日常の中でささやかな幸せを見つけるという本質的な才能を持っています。だからこそ、『賢者の手』の力の代償が何とも痛ましい。

この物語を読めば、私達が持って生まれた五感も、生きていく上での『才能』であり、幸せを噛みしめる為の『贈り物』なのだと、しみじみと感じることが出来ます。

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