新・優しいだけではなく毅くなければ!賢者の手を継ぎし青年の声は燃える!

本作を読了したとき、私は震えていました。

その経緯について、幾分か語りたいと思います。

誰が気付くでしょう。

先ずは、サブタイトルの秘密です。

乙女、カニときてラストは双子です。

その上、全て六文字で表しております。

もう、拝読させていただく前から、わくわくいたしませんか?

さて、派手な爆発音もなく始まった本作、でも内なる魂の炸裂がホームに滑り込むが如く煌めいております。

主人公、小林一茶青年は、街角でかつて学んだ占いを生業の一つとしておりました。

本作は、現代ドラマのカテゴリにあり、その通りに人との成り行きを淡々と追って行く熱い傑作です。

けれども、タグにあるように、異能やファンタジーの要素も取り入れ、現代ファンタジーとしても、また、拝読して感じました推理物としてもカテゴライズされてもおかしくない王道を行くものだと思いました。

最初の事件は、最重要人物、大会社の偉い方でありながら、矜持をしっかりと持ち合わせているあやめさんの元へ、一茶くんは彼女の娘であるエレインを介して連れられて来ました。

そこからは、二人だけの極秘のできごとです。

なにせ、あやめさんもすこぶる的中率を誇る占い師だったのですから。

大きな選択肢が迫って参りました。

一茶くんが、あやめさんの特別な占いの能力を引き継ぐか。

ギフトの正体は、驚くべきものでした。

それから、経済という世界がとても面白く描かれていました。

毎日沢山の新聞を読むこと。

それらをベースにした上で、あの神業がなされるのでしょうか。

そう、『賢者の手』です。

この能力の使い方によっては、身を滅ぼして行きかねません。

いえ、命懸けです。

それは、美味しい汁には毒も入っていると言う訳で、大きな力を得る代わりに、失うものがあったのです。

だからこそ引き立つのですが、本作のデザインがとても透き通っていて好きです。

景色の色や服の様が美しいと感じられます。

何かを敏感に感じられることは、幸せなことの一つなのでしょう。

一つ失っただけでも危険な場合もありますし、苦しいでしょう。

あるとき、一茶くんがとても危険な目に遭いました。

私はどれ程哀しみ憤ったことでしょう。

優しく賢明で質素な一茶くんは、ずっと大人しかった。

がんばりましたとお伝えしたいです。

そして、彼らを紡いて来た言の葉達ですが、歯応えもよい読みやすさを兼ね備えたものです。

最初は気になった指マークですが、数話目からはいいシンボルマークに思えました。

丁度、手相占いと賢者の手とのこともありますし。

細かい所で楽しいシーンも沢山あります。

お料理のことだとか、ペットのことだとか。

所謂ラグジュアリーな感じの虚無感とか。

ベクトルはいつも最適でした。

ああ、私はこの中の人々に友愛を感じていたのだとそっとラストページを閉じたのです。

所が、本作を作者さまのご意向で編成をなさり、『プロローグ』と『エピローグ』が追加されておりました。

『プロローグ』は、とてもいい伏線になったと思います。

そして、『エピローグ』は、後日談をより深めております。

水槽で年月も感じ取られる工夫、そして、彼女達の成長も大きく楽しめます。

すき焼き、いいですね。

私も一文字ずつ拾って、ご馳走になりました。

愛情がこもっていて、美味しかったな。

そして、本作を締め括るラストへの柔らかな流れがとてもあたたかいと感じます。

素敵な出会いをありがとうございました。

是非、一茶くん達に会いに来てください。

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