未来を見る力を手に入れた青年の結末は?

占い師を営む主人公、小林一茶は親を亡くしバイトをしながら慎ましい生活を送る穏やかな青年なのですが、ひょんなことから出会った老女から未来を見ることができる力を受け渡されます。

そしてその力で、投資や株の運用に関する未来を見る仕事に就くように持ち掛けられるのですが……。

野心や我欲というものからはかけ離れていて、他の人の頼みを聞いてあげるばかりの主人公。
舞台は現代的なのですが、彼自身は昔話に出てくる正直者のように朴訥とした今時珍しい青年です。

そんな彼を周囲の人々は過酷な運命に巻き込んでいくのです。彼らが「助けてほしい」「困っている」と善意の被害者として主人公を追い込んでいく様に切ない気持ちにさせられました。

そしてそれは最後に彼にとって大切な人々を巻き込む大きな事件につながっていきます。
どんな目にあっても一貫して自分の運命を受けとめる主人公の姿に川の激しい流れに翻弄される一枚の葉を目で追うかのように先が気になって、最後まで物語を読み進めてしまいました。

活発な主人公ではありませんが、感情移入して楽しむことができる物語でした。

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賢者の手

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