概要
※苦手な方はご注意ください。
僕は死ぬために廃ビルの屋上を目指していた。僕は、派手に血をぶちまけた死体にならなきゃいけなかったから。
その途中、人の死体があった。血で紅く飾り付けられた死体で、何かのオブジェみたいに見えた。
死体をつくった人間はその隣にいた。闇みたいに黒い男だった。
僕は、そんな殺しの現場を見てしまったから、その闇に殺されると思った。殺してくれると思った。けれどその闇は僕を殺さなかった。
「もともと綺麗な奴を、わざわざアートにしてやる必要はないから」
そんなことを言って。
それから僕と、闇みたいな殺し屋の奇妙な関係が始まる。
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- ★★★ Excellent!!!殺し屋×死にたい少年×猫
死ぬために廃ビルの屋上を目指したロルフ。
そこにいたのは、死体をオブジェのように飾り立てた殺しリグ。
殺してくれ。というロルフの願いをリグは断る。
そこからロルフとリグの奇妙な関係が始まった。
ロルフがなぜ死体になろうとしたのか。
リグは何故殺し屋を始めたのか。
そういった疑問が、少しずつ、それでいてストレスなく解消されていく構成のおかげで、そういうことか。と登場人物たちの言動に納得し、共感しながら読み進めることができました。
育った環境も、体験した経験も違う、普通に生きていれば出会うことのなかった2人が過ごす奇妙な空間。
そこで人間の事情などしらず、自由気ままに過ごす猫たち。
全体的…続きを読む - ★★ Very Good!!全てに愛されたいと願った、全てを愛したかた。だから死を望んだ。
ロルフは「我儘」なのかもしれない。
愛されたいと願い、守りたいと誓った母が自分を顧みないと知った時、その苦痛から逃れるために死を願った。
彼が子供だから?いや違う!
誰もが誰かを愛したい、誰かに愛されたい。殆どすべての人がそんなささやかな願いを持っている。
愛しているから相手のすべてを受け入れ、相手の望みを叶えようとする、自分を犠牲にしてでも。
結果、擦り切れ、疲れ、自分の行く末を見失ってしまう。
ロルフは幸運だったリグと出会ったから。
ロルフは幸運だったパメラが居たから。
絶望と困難に出会った時、そこには生きる兆しが表れる。
手を伸ばすかどうかは貴方次第だ。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!『死』を探してさ迷った少年が、たどり着いた一つの答えとは?
死体になりたい――。
そう願ってさ迷い続けた少年の前に現れたのは、何色にも染まらない完全無比の闇を纏った男だった――。
といった感じに始まるストーリーですが、はっきり言って、心の綱渡りをしているかのような奇妙な感覚に落とされました。
おそらく、この作品は落ちろうと思えばどこまでもダークな世界に落ちるはずです。しかし、それに抗うように作品全体を包む優しさが、アンバランスなまま、読者を繊細な心理描写に誘います。
注目すべきポイントとして、いくつもの問題を抱えた『僕』が登場してきますが、それらを丁寧に解決へと導くストーリーは、暗闇の中で見る光のように思えました。
素晴らしい作品と、綱渡り…続きを読む