第15話 魔法対策(3)

 この世界の魔法の概略は分かった。

あとは魔法使いと対戦することになった時にどう対処するか。それを考えればいい。ベストは相手に魔法を使う暇を与えないこと。そして魔法を使おうとしたら妨害すること。特に低レベルの魔法使いは特に外部へ向けての魔法の発動までに時間が掛かるとのことなので、初見では相手が魔法使いか否かの判定が詠唱に注意するしかない現状では詠唱を始めたところで集中を妨害することも不能ではないだろう。幸いなところは元の正解のゲームと違ってショートカットが存在しないことだ。詠唱とか無関係に魔法をぶっ放されたら対応のしようが無い。


ここまで考えて、ふと『これオレも魔法使えるんじゃね』と思いついてしまった。元の世界のラノベなどでよくある異世界魔法では『魔力』を感じ『イメージを載せて』魔法を放てばその世界の本来の魔法より威力が上がる、なんてのもあった。出来なければ出来なかったときだ。そしてもし魔法が使えてもその事実はできるだけ隠そう。そう例えばクーフェン相手にであっても。となれば練習をしてみる。ラノベでは『魔力の流れを感じる』のが定番初手だが、ちょっとだけやってみる。イメージ的には体内の血流を感じるイメージだ。目を瞑りイメージを積み重ねる。1時間ほどイメージを重ねたところ。

「うん、やはりわからないな」

これはある意味想像どおりだ。


次は魔力の流れを感じることなく事象のイメージだけで魔法を発現可能かの実験。

とりあえず他者から見えにくいことから風をおこすのを試して見る。

目標地点を定める。窓から小さめの草を見つけたのでターゲットにする。ターゲットの向こう側の空気を薄くするイメージ。風よ吹け。ん、微妙に草が揺れたかな。向こう側の空気を薄くするイメージをさらに強くする。風よ吹け。『ヒュゥウ』明らかに他と異なる空気の流れ『風』が発生した。

その後何度か実験を行い分かったことは強くイメージすればするほど強い風が吹くようだ。強くイメージすると弱いイメージの時に比べ少し脱力感というか倦怠感を感じる。現状では草を少し強く動かす程度の風しか起こせない。これはいわゆる慣れで変わるものなのか、それともラノベでいうところのスキルレベルとかそういったものがあるのだろうか。連続で複数回発動できるので魔力的なものが足らないわけでは無いと思う。そしてオレの場合で魔法発動におおよそ3秒掛かる・・・


『ん?オレは呪文を詠唱していないな』このあたりはお約束のイメージか。


次は体の皮膚の密度を上げることを強くイメージしてみる。とりあえず拳の部分だけに対して行ってみた。壁を軽く叩いてみる。『コンコン』硬い音が返ってくる。少し強く叩く『ゴンゴン』普通なら痛みを感じる強さだ。ふむ、ほとんど痛みが無い。思いっきり殴ってみる『ガン』普通なら悶絶する位痛みを感じ、皮くらいはめくれている強さだ。痛みはある。が、これは拳の内側に打撃分のダメージが来た感じとでも言えばいいのだろうか。表面はまったく異常が無く、内部に痛みが少しあるだけだ。鉄板で拳を覆って殴ったような感じとでも言えばいいだろうか。さらに試しに腕全体の密度を上げるイメージをしてみた。クラり、眩暈がする。おそらくコレが魔力切れか。乗り物酔いのような感覚が襲ってくる。魔法が発動したかどうかの確認すらする気にならない。今日の実験はここまでにしておくか。

壁にもたれて気分が回復するのを待つ。10分ほどで、どうにか普通に動ける程度には回復した。今回の実験結果を思い起こす。まずはイメージをすれば魔法の発動は出来た。外部への発動には最低3秒必要。自分への発動は1秒も掛かっていない。俺の場合は特に呪文の詠唱は必要なかった。呪文を知らないため呪文の有無による効果の違いは不明。現状4~5回程度魔法を使うと動けない程に消耗する。拳表面だけを強化した時と腕全体を強化したときに消耗度の違いがあるかどうかは要検証。こんなところか。本当は攻撃魔法として使えそうな火を使ってみたいが現状では実験するだけでもリスクが高すぎる。この『試し』が終わったらどこか人目につかない場所で試してみるか。


これで自分での魔法を使うことも含めて魔法対策は、『発動を妨害すること』と妨害できない場合は『相手の魔力の消耗を待つ』の二通りだろうと予測できる。今回ユラから聞いた魔法の内容と、今回の魔法実験はこれからの戦いに大いに役に立ちそうだ。そんなことを考えながらキールは眠りに落ちていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る