第9話 2回戦へ

 「キール。今日の5番目だ」

「はい、クーフェン様」

『大丈夫、大丈夫。オレは勝てる』

恐怖と緊張をほぐすために控え室で自分に言い聞かせるキール。

そして時間がきた

「5番出ろ」

いかつい男に促され闘技場に引き出される。

深呼吸を1回。対戦相手に目を向ける。

相手も幼い奴隷のため男女の性別さえわからない。相手の瞳にかすかに恐怖を見たのは気のせいだろうか。それでも今は闘うしかない。倒すしかない。自分が生き延びるために

「はじめ」

戦闘開始の合図。キールはやはりやや斜に身構え相手を観察する。

1回戦の相手と同様に直線的な突進を繰り返す相手をいなしながら機会を待つ。

しばらく距離をとりつつ観察を続けると、相手の息があがり動きが鈍る。

そこで1回戦と同様に仕掛ける。低い位置においた手からボディへスピード重視の突きを数回。ことごとく相手を正確に捉える。いかにスピード重視とはいえ体力切れのところへ正確に急所を打ち抜かれればそれなりのダメージが入る。

さらに相手の動きが鈍ったところに『わざと』大振りのスイングで顔面を打つ。

頭部の骨は硬い。そこにグローブなどの防具なしで拳を撃ち込めば自分の拳も痛める可能性が高いため平手だ。大きく脳を揺すられた相手はその場に崩れ落ち身動きさえしない。一応意識はあるようだが、これだけきっちりと脳を揺すればしばらくは行動不能だろう。

しかし、これで勝負は着いたはずだが、終了の合図はない。

キールは追撃を行う。ただし、大きなダメージを残さないよう慎重に。

相手の意識が完全に落ちたところでようやく決着した。


控え室に戻ったキールにクーフェンは一言

「次は3日後だ」

「はい」

今回もキールは次に繋げる権利をつかんだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る