第4話 緒戦
迎えた初日キールは緊張しつつ闘技場に向かった
と言っても、さすがに奴隷であるため首輪をつけられロープでつながれた状態で逃亡防止のためだろう、窓のない馬車による護送であり、快適とは程遠い待遇である。
この馬車は会期中のキールの寝所・待機場所ともなる
「まぁ奴隷なんてこんなもんか」
ひとりごちるキールであるが。緒戦の不安がひざを揺らし、こぶしに汗をかかせていた。
会場は領都カンフル近く、多くの支配層とそれより多くの奴隷と更にそれより多くの観客が集まりちょっとしたカーニバル会場となっていた。
翌日、いよいよカーニバル本番である。
「おまえは、ここの3番目だ。せいぜい勝ちぬくことだ」
闘技場の控え室にキールを送り込みながらクーフェンがつぶやく
期待度の高い連中は後から登場すると聞いていたため
まぁそんなものかと頷き、覚悟を決めるキール。
せめてもの救いは武器を持たない素手による戦闘であるらしいことであった。
「3番、出ろ」
いかつい男にうながされ闘技場に引き出される
ぐるりと見回すが期待度の低い1回戦だけあって観客は少ない
居るのは、キール側にクーフェンと、対戦者側に優男ひとりだけであった。
それは静かな立ち上がりだった
キールが常に引いた位置で立ち回ったからだ
両手を自然にたらし軽く半身に身構えたキールは対戦相手を観察していた。
ただまっすぐに突っ込んでくる相手にやや疑問を感じながら闘技場を丸くつかい距離をとりつつ観察を続ける。
しばらく観察を続け、相手の息が上がってきたところで軽く仕掛けて見た
いや仕掛けとも言えない僅かな仕掛け。
両手を軽く前に出し「捕まえるぞ」と見せただけだ
相手は大げさに避けたのを見て考える
『期待度の低い対戦』であること、『息が上がり余裕がなくなりつつある状況』での反応であること『動きが直線的』であること
これらを踏まえ、対戦相手が『素人』と判断した。
また、観戦者が僅か2人であることも考慮し、『一瞬であれば』もとの世界の知識を生かした攻撃も使って良いと考えたキールは・・・
次に相手が突っ込んで来たタイミングで『足を滑らせ体勢を崩した』
そのときにバランスを取ろうと伸ばした手が相手の顎先を掠めた
バランスを取り切れなかったキースは地面に転がったが、転がったのは相手も同様であり、キースの手が顎先をかすめ脳を揺らされた対戦相手は立ち上がることが出来ない。
立ち上がり一瞬目をそらしたキースは
「すまん」
相手の脇腹を蹴り上げた。
「ガッア・・・」
何度も蹴り上げる。
『早く止めてくれ、もう勝負はついただろう』
キースの悲痛な思いは通じない。キースの心に迷いが生じが一瞬・・・
対戦相手がキースの足をつかんだ。
その力は弱く、キースの体勢を崩すことは出来なかったが、明らかに未だ戦意を維持している証左であった。
『意識があり、戦意をもつ』それではこの戦いでは『負け』の判定をされない
キースは覚悟を決めた・・・・
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