第3話 待つ時間

 『奴隷の戦い。おそらくは見世物だろう。幼児の殺し合いを見世物にするってのは良い趣味とは言えないが、当事者としてはそんなことも言っていられないか・・・』


キールは考える、どうしたら生き延びられるか・・・


『時代は地球でいえばローマ時代あたりか、奴隷の立場でなくとも21世紀のような医療レベルは無いだろう。まずは怪我をしないことが優先だな。洗練された格闘技や格闘理論・解剖学的なアプローチはされてないだろう。そのあたりが21世紀の知識を持つオレのアドバンテージか。いや経験でそのあたり埋められている可能性もあるか、思い込みは危険だな。結局はやってみないと分からんということだろうが・・』


しかし、問題があった


『それよりも・・・オレは戦えるのか?幼児相手に本気で。今はオレ自身も幼児とはいえ』




戦えるか否か、考えても答えは出ない

答えが出ない以上、キールは別のことをすることにした


「クーフェンさん。少し教えてもらえますか」

「キールか、何が聞きたい。答えられるものであれば教えてやろう」

「ありがとうございます。試しではどんな場所でどんなふうに戦うのですか」

「まず試しの場は直径5mの円形の闘技場だ。まわりは頑丈な板で高さ4mまで囲まれているから逃げようはない、が、慣れると利用するヤツも出てくるな。それとどんなふうに戦うか・・・どんなか・・・・

そうだな、例えば、おまえが私と戦うならどうする?」

「え・・クーフェンさんと戦うなんて無理でしょう。」

「それでも、戦いの場に出され目の前に私がいたらどうする」

「に、逃げまわります」

「正解だな。それが答えだ」

「逃げるのが正解・・・ですか」

「わからんか、試しに参加するほとんどのものは戦ったことなどないのだぞ」

それだけ言うとクーフェンは離れていった


『謎解きかよ。いくらなんでも7歳児に難易度高すぎだろう。まぁわからんものはわからん。戦うフィールドは直径5mの円柱の中か。地球の格闘技のリングを円形にしたぐらいのイメージか、ただし、周りを囲むのはロープではなく板か、打ち付けられたら痛そうだな。あとはとりあえず体の動きをたしかめて出たとこ勝負か・・・』


試し前日までキールは立ち木に飛びついたり滑り込んだりと奇妙な行動をして周囲から胡散臭い目で見られることになった

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