第23話 石館優菜
ベッドに横たえられた幼女は意識を失っており、ベッド横のシルバーブロンドの女性が緑色の光を宿した手をかざしていた。
『優菜ごめん』浮上しかけた意識の中でフェリスの中で試し10回戦において対戦相手の男の子から掛けられた言葉がリフレインしていた。『ゆうちゃん』ふと浮かんだ幼馴染の名前。そしてすぐにそれを否定する。『そんなわけないよね』
完全に意識が回復したフェリスの中で後悔が胸を蝕む。『こんなことになるなら、どんなに揶揄われても離れるんじゃなかった』意識を取り戻したフェリスの頬を涙が濡らしていた。
気付けばベッド脇にいた女性は治癒魔法を止めていた。そしてフェリスの様子を興味も無さそうに眺めながら。
「終わりました」
「行くわよ、フェリス。今日は流石に相手が悪かったからお仕置きは無しで良いわ」
「は、はい」
「今回の相手。フェリスの魔法を何度直撃したかしら」
「直撃は3回です」
「回復魔法を使っている風もなかったから、本当に耐えたのだろうけれど。そこまでタフには見えなかったのだがな。まあいい。同じ試しでの生き残りだ。これからは共闘することもあるだろう。無駄に削る必要もあるまい」
その言葉にフェリスは歓喜を覚えた。『あの子と一緒に居られるかもしれない。少なくとも日本からの転生者であることは間違いない。それに自分の日本での名前を呼んでくれた。知り合いの誰かである可能性が高い』この想いはフェリスの心を強くする。次の戦いがあることを知ってもフェリスも覚悟を持つことができた。どうにかして生き延びるのだ、と。
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