第17話

 ついに9回戦、残り4人。ここまでくれば幼戦奴昇格はまず間違いなく、あとは昇格後のランクが変わる程度らしい。

「キール、今後の対戦相手は全て魔法を使う」

「全員が、ですか」

「そうだ。とりあえず今日の対戦相手は雷魔法だ。これは中々やっかいな魔法だ。魔法の速度が速く、当ると火傷を負うと同時に動きが鈍る。火傷じたいは、火魔法より軽いが戦闘中に動きが鈍るのがやっかいだ。だから基本的には発動前につぶせ、どうしても当るときにも腕で受けろ。全身の動きが鈍るよりは腕の動きだけが鈍るほうがマシだろう」

「わかりました。お教え頂きありがとうございます。全力で倒してきます」

雷魔法か。効果からして高電圧の電気だろう。元の世界のスタンガンを思い浮かべる。しかしあれは相手のどこに当てても行動不能に出来たはず。となればそこまで強力な電圧・電気ではないということか。そのレベルならちょっとした絶縁物があれば怖く無いのだけれど。この世界にはゴムも無い……本当に無いのか?

「クーフェン様、お時間を頂きありがとうございます」

「ふん、お前は勝ち残った。ここまで来れば部位欠損等の戦闘不適格状態にならなければ幼戦奴への昇格は間違いない。多少の事は聞いてやる」

「実は夢に女性が出てきましてある物が雷魔法対策に役立つと言われたのです。それは、木の樹液で水を混ぜるとババロアのように固まり……」

とにかく自分の知識にある天然ゴムに関する情報を話し、そういう物が無いかと聞くと。

「ふむ、グーフがお前の言っているものに近いな。そしてそれが欲しいのか」

「はい、薄い物でかまいませんのでそれを衣の前面に貼り付けたいと思います。もしあの夢の女性の言ったことが本当であれば雷魔法に対してかなり抵抗できると思います」

「だがひょっとすると防具とみなされかねんな。もしそうなったら使えないぞ」

「はい、その時は諦めます。ただ、薄くてかまいません。防具として衝撃を吸収するほど厚いものは不用です」

この世界での加工能力がどの程度か分からないが1ミリ未満には出来るだろう。それなら防具としての判定は逃れられるのではないだろうか。

そして翌日

「キール、できたぞ。これで良いのか」

それはこの世界の衣服貫頭衣の前面に当る部分に極薄いゴムが貼り付けてあった。もちろん、これは保険だ。魔法の発動前に潰すのが最善であることに変わりは無い。

その特製の衣を纏い出番を待った。

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