第18話
9回戦当日。やはり対戦相手からクレームがつき現在審議中。
『まぁ見たことも無い服じゃクレームつくか』
もともとダメモトで作ってもらった装備だ。ダメならダメで構わないとキールは考える。相手に魔法を使わせなければ良い。あとは電気ということは流れる先が必要なはず。最悪相手に接触してしまえば痛み分けも考えられる。認められなかった場合の対応方法を頭の中で一通り再確認しながら待機する。10分ほど待つと裁定が下った。
「特異な防具であり使用不可とする」
もともとダメモトでの装備だ。あっさりと使用を諦めるキール。
「わかりました」
「では、はじめ」
魔法を使われる前にと速攻に出ようとするキール。そこに
「雷球」
いきなり放たれる魔法。とっさに左腕でガードしながらも右に飛ぶキール。飛来速度の速い雷魔法はキールの反応速度の上を行き完全な回避を許さない。それでも7歳児の小さな身体は辛うじて直撃を避けることに成功する。しかし、左腕に感じたビリっとした衝撃からキールは左腕に魔法が掠った事を感じる。それと同時に左腕に痺れを感じ反応が悪い事を認識した。
『詠唱無しかよ。この世界の魔法は詠唱が必要なんじゃなかったのか』
反応が悪いのが左腕の肘から先のみであることを確認し安堵の吐息を吐く。それでも数分間は左腕は役に立たない事を覚悟する。そうはいっても離れていては勝負にもならないため右左とフェイントを交えた動きで相手との距離を詰める。とにかく1撃を入れる。まずはそこからだ。そう思い、ふと気づく。相手からの魔法が飛んできていない。詠唱が不要で飛来速度の速い雷魔法なら連発とまではいかなくても何度かは放たれてもいいはずだ、と。
ならば、フェイントをやめ直線的に全速で近づく。魔法は飛んで来ない。良く見ると相手の唇が動いている。『詠唱をしている?』なら最初の1発は?『いや、今はそんな事を考えている場合じゃない』。そのまま接近し1撃を詠唱中の頭部へ平手打ちを撃ち込む。詠唱を中断させ魔法の発動を止めるためだ。上手くいったらしい。あとは小さな近接攻撃を頭部中心に行って詠唱をさせず倒し切る。
勝利を確信したキールには僅かな驕りとスキが出来てしまった。魔法を使わせなければ自分の勝ちだと思いこんだ結果、防御に大きめのスキが出来、そこを突かれた。相手にタックルを許してしまったのだ。
「しまった、こいつ。放せ」
タックルから逃れるためにもがくキール。その僅かな時間で
「ぐあぁ。全身が痺れ」
接触した状態では無詠唱もしくはほんの僅かな詠唱で魔法が使えるようだ。動きの鈍った身体をそれでも必死に動かし相手の手から離れようとするキール。しかし、相手も動きがおかしい。どうやら接触した状態での雷魔法は術者本人にもダメージを与えるようだ。あとはどちらが早く戦闘可能な状態まで回復できるか。
ほぼ同時に回復した二人。立ち上がるキール。半身を起こしただけの状態で詠唱を開始する対戦者。ふらつきながらもこん身の回し蹴りをこめかみに叩き込む事に成功するキール。対戦者の目が光を喪いうつろな表情をさらす。
そこからはあっさりと勝負がついた。しかしキールは決勝進出の決まった瞬間に膝を着き荒い息を吐いた。
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