異世界ハードモード

景空

第1話 自由の無い転生者

執事服を着た壮年の男が呼びかけた

「キール何をしている。さっさと来い」

キールと呼ばれた少年いやその姿は幼子と言うべきかはポカンとした顔をして呼んだ相手を見ていた

「な、いったいここは?」

「キール。いいかげんにしろ、小戦奴とはいえご主人様をお待たせするようなことをしたら鞭打ちでは済まんぞ」

『キールって、オレはそんな名前じゃ・・ってかここはどこだ?それに小戦奴?・・・え?鞭打ち?・・・』

鞭打ちと聞いた幼子は慌てて先導する男の後ろに従った



『オレは神田勇三高校2年17歳、宿題をどうにか終わらせて趣味のファンタジーMMOソード&スレイブをプレイしていたはず。寝落ちして夢を見ているにしてはリアリティがありすぎる・・・』



混乱するキールが連れて行かれたのは石造りの屋敷、そこの中庭だった。

「ルフト様、連れてまいりました」

ルフトと呼ばれた貴族風の男は、鷹揚にうなずくと

「クーフェン。そいつか?次の小戦奴は?」

「まだ小戦奴候補でございます」

「ふん、そうだったな。でどうなのだ?」

「現在保有する奴隷の中では1番マシではありますが」

「今期は不作か」

「はい。もうしわけございません」

「ふん、名は?」

「キールでございます」

そこでルフトは幼子に向けて言い放った

「キール。おまえはこれから小戦奴だ。最初の試しは10日後だ」

『転生かよ・・しかも7歳の奴隷だと?テンプレなら神からチート能力をもらって冒険者じゃないのかよ』

神田勇三あらためキールは頭を抱えた。せめてもの救いは小戦奴候補の特権として奴隷としては破格の待遇だというだけだろう。食事は3食まともと言えるものが与えられ、粗末とはいえベッドつきの個室が与えられたのだから


ルフトに会わされた後でクーフェンから説明を受け事情はなんとか把握したキールだが決して気分のよくなる話ではなかったのだから

小戦奴とは言ってしまえば幼子による拳奴であった。いや拳だけで戦うのではなく武器を持たなければ何をしても許されるバーリトゥードによるトーナメント

毎年1000を数える幼子の奴隷が、ただの1人を決めるためだけに衆目の中ひたすらに殴り合い、いや殺し合いをさせられるのだという。もちろん死が勝ち負けの判定基準ではないが、毎年参加させられた幼子の3割が命を落とし残りの半数は障害を抱えることになるとのこと。そして健康なまま生き延びたとしても奴隷としての一生が待っているだけなのだと


クーフェンは言った

「勝ち残れ。そうすれば適う望みもあろう」

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