概要
ただ負けたくなかった――
幼なじみの果歩(かほ)に誘われスケート場で放課後を過ごす日々を送っていた中学生、天宮制覇(せいは)。
彼にとって果歩への感情はまだ特別なものではなく、スケートもただの遊びでしかないはずだった。
そんな二人の居場所にアメリカ帰りの転校生・蒼井流斗(りゅうと)が現れる。
アイスダンスをするという彼のスケートの力に強い焦りを感じる制覇。
制覇は何かに駆り立てられるように、彼と同じ道へと飛び込んでいく。
しかしそこは制覇の日常からは遠くかけ離れた別世界で……。
その上、制覇が手を取ることになったのは、目指すものも実力も本物の高校生・音川陽向(ひなた)だった。
――これは、誰もが通るちょっと苦しくてちょっと幸せな成長の道のりを
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!知られざる『アイスダンス』の世界へようこそ!
私がこの小説に興味を持ったのは、日本人が持つ「フィギュアスケートと言えばシングル」という固定観念の構図が、「自転車と言えば競輪」に似ていると思ったからです。自転車競技に競輪、ロードレースやBMX(その他いっぱい)があるように、フィギュアスケートにもシングル、ペア、そして『アイスダンス』があるのです。
「マイナースポーツはなぜ人気がないのか」
これには様々な理由が考えられますが、一番の理由はその競技の面白さが人々に認知されていないということだと私は思っています。この小説はアイスダンスに焦点を当て、少年の気持ちを丁寧に描くことによって競技の魅力を浮かび上がらせることに成功しています。
印象…続きを読む - ★★★ Excellent!!!真央ちゃんや弓弦君とは違うスケートの世界を知れる!
平昌オリンピックでも日本選手が活躍しましたし、羽生結弦君が金メダルを獲ったりと、日本にウインタースポーツは定着したものだと思い込んでいました。
アイスダンス。
アイスダンスでは日本の位置付けが低いそうです。競技人口も著しく少ないのだとか。
そんなアイスダンスを題材に、主人公の少年が成長する過程を描いた作品です。
ダンスですから勿論、女性は登場するのですが、本作品が"現代ドラマ"として投稿されている通り、軸は成長物語に有ります。
結構、面白いです。
映画で喩えるなら「ベストキッド」が近いかも。カクヨム投稿作品の中から似た作品を挙げるなら、梧桐彰氏の「右カウンター赤道より」だろうか。
私自…続きを読む - ★★★ Excellent!!!少しずつ前に進んでいことでしか味わえない感動がある
制覇は、スケートは好きでも競技としては捉えておらず、幼なじみの果歩に連れられてときどきリンクに顔を出すくらいだった。
しかし、ひとりの転校生、蒼井の登場によって彼は「アイスダンス」というスポーツの世界に入り込んでいく。
蒼井へのライバル心から始めたアイスダンスだったが、スケートを習ったことのない彼にとって練習は知らない単語、慣れない感覚、初めてだらけで制覇は最初、困惑したり動揺したりする。ところが、必死にしがみついて練習を続けていくうちにアイスダンスの魅力に、そしてスケートの本当の楽しさに気付いていく。
少年の成長や心情がきめ細やかな描写で描かれた、そんな、氷上の「熱い」物語。
第二…続きを読む - ★★★ Excellent!!!もがき成長する青春
アイスダンスという日本ではまだマイナーな競技を通して、主人公(制覇くん)が成長していく様を丁寧に描いた作品です。ぐいぐいと引っ張っていくプロットラインとは裏腹に、実は筆致は比較的控えめで、それが良い効果を出しているように思えます。
幼馴染の少女への恋心未満の好意や、突然現れた帰国子女のライバルの存在も、ありきたりな設定に終わらず、品よく抑えた筆致で好感がもてます。
主人公の自分の名前に対するコンプレックスや、自分の未熟さへのくやしさ、そして個性豊かな脇役たち。惜しむらくは制覇くんが中学生というにはやや成熟しすぎているように思われること。
とはいえ、それは読んでいる時には気にならず、ぐいぐいと…続きを読む - ★★★ Excellent!!!素直に「素敵だ」と思える青春のお話
一言で言ってしまえば「スケートを愛する少年少女のお話」なんだけど、スケート、特にアイスダンスと言う種目を通して、彼らが悩んだり苦しんだりを乗り越えながら、周りの人たちの協力を得て、少しずつ成長していく過程を切り取ったストーリー。
そこには年相応の悩みがあったり、自分の実力に対するもどかしさがあったり、時には目標を見失ったりする、等身大の中学生の姿がある。
だから読んでいる方としてはとてももどかしく、ひたすら彼らに声援を送るしかないのだが…。
ぶっちゃけスポ根モノの部類ではあるのだろうが、徹底的に爽やかに書かれているところが好感が持てる。
素敵なお話でした! - ★★★ Excellent!!!精緻な心理描写で綴られる、氷上のマイナー競技・アイスダンスの青春小説!
氷上のマイナー競技・アイスダンスを題材にした青春スポーツ小説です。
昨今、フィギュアスケートに関しては、国際大会における日本選手の活躍もあって、世間的な認知度の高いスポーツになっている印象があるものの、アイスダンスについては私もほぼ予備知識がゼロの状態でこの作品を拝読しました。
結果から言えば、純粋に青春小説として面白かったです。
スケート競技にまつわる実際的な蘊蓄を学べる点は言うまでもないのですが、主人公の内面を綴った描写が素晴らしい。
何気ない切っ掛けから競技と関わり合うことになり、何だかキツいなあと不満を感じたりする場面がありつつも、のっぴきならない状況を経て徐々に本気でアイスダン…続きを読む - ★★★ Excellent!!!アイスダンスがどういうものかが主人公の成長とともに描かれる
フィギュアスケートの中でもテレビなどで取り上げられることの少ないアイスダンスを題材とした作品です。
フィギュアスケートを滑るということそのものがどういう事なのか、その中でもアイスダンスというのはどういう競技であるのか、といった点がたいへん良く描かれています。
特に、男性側のリードが大切とされるアイスダンスにおいて、いかに男性側が苦労をするか、高いスケーティングやフォローが求められるかがとてもリアルに描かれていて、感銘を受けました。
実際、アイスダンスを鑑賞することが好きな私は、うんうんと頷けたり、なるほどと納得したりすることが多かったです。
しかし、たとえアイスダンスにもともと興味がなか…続きを読む