もがき成長する青春

アイスダンスという日本ではまだマイナーな競技を通して、主人公(制覇くん)が成長していく様を丁寧に描いた作品です。ぐいぐいと引っ張っていくプロットラインとは裏腹に、実は筆致は比較的控えめで、それが良い効果を出しているように思えます。
幼馴染の少女への恋心未満の好意や、突然現れた帰国子女のライバルの存在も、ありきたりな設定に終わらず、品よく抑えた筆致で好感がもてます。
主人公の自分の名前に対するコンプレックスや、自分の未熟さへのくやしさ、そして個性豊かな脇役たち。惜しむらくは制覇くんが中学生というにはやや成熟しすぎているように思われること。
とはいえ、それは読んでいる時には気にならず、ぐいぐいと引っ張られる読書体験でした。
本当はもっと多くの作品を生み出す土壌がある物語なのでしょう。中学生を主人公としながら、大人の読書に耐える作品に仕上がっています。

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