知られざる『アイスダンス』の世界へようこそ!

私がこの小説に興味を持ったのは、日本人が持つ「フィギュアスケートと言えばシングル」という固定観念の構図が、「自転車と言えば競輪」に似ていると思ったからです。自転車競技に競輪、ロードレースやBMX(その他いっぱい)があるように、フィギュアスケートにもシングル、ペア、そして『アイスダンス』があるのです。

「マイナースポーツはなぜ人気がないのか」

これには様々な理由が考えられますが、一番の理由はその競技の面白さが人々に認知されていないということだと私は思っています。この小説はアイスダンスに焦点を当て、少年の気持ちを丁寧に描くことによって競技の魅力を浮かび上がらせることに成功しています。

印象に残ったのは、冒頭で登場する転校生の扱いです。読み進めていくと、主人公と彼との絡みが少なすぎることに気付くはずです。あれ、彼はライバルになるはずなのでは……? なんでこんなにも出番がないのか……? しかし、その理由が明らかになったとき「それこそが伏線だったのか!」と、気づけなかった自分に悔しさを覚えると共に、ちゃんと練られたプロットであることに感銘を受けました。

アイスダンスの世界に、あなたも浸ってみませんか?

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