隠れた青春SFの名作。泣けます。
- ★★★ Excellent!!!
作者様からレビューを頂いたことをきっかけに読み始めた作品ですが、20万文字一気読みでした。この作品に★もレビューもついてないとか納得できない。というわけで、宣伝がてらレビューさせて頂きます。
物語は幼馴染の少年二人宛に「世界から存在を消されたもう一人の友人」から手紙が届くところから始まります。消されてしまった友人は「最初から存在しなかった」ことになっており、少年二人には当然心当たりはありません。ここから手紙の差出人探しが始まり謎が解き明かされて行く、と言う流れが王道パターンですが、本作はそうしません。放っておきます。そのうち、片方の少年にだけ消えてしまった友人が見えるようになり……という筋書きです。
ジャンル登録は現代ドラマですが、自分的にはSFかなと感じました。ガッチリしたサイエンスフィクションのSFじゃなくて「すこしふしぎ」のSF。個人的に「すこしふしぎ」系のSFはその面白さをSF要素に頼れず、人物をいかに魅力的に書くかで成否が決まる高い筆力が要求される分野だと思っているのですが、その要求を本作の作者はしっかり越えてきました。
とにかく人間の描写が卓越しています。本筋に関わらないキャラ含めて「設定だけ用意して都合よく配置された」と感じるキャラクターが見事に一人も居ません。全員に血肉が通っています。生きています。嫉妬を覚えるほどに巧みです。
そのキャラクターたちが生み出すストーリーは大きな一つの起承転結で構成されています。「起」パートの強烈な引き込みから、「承」パートの生き生きとしたキャラクター描写を経て、ハイライトの「転」パートへ。泣けます。僕は泣きました。詳しく語るとネタバレになるので語れませんが、そこは是非、読んでください。きっと泣くと思います。
作者様からレビューを頂かなければ、僕は本作に触れることは無かったでしょう。本当に勿体ないことです。このレビューから同じような出会いを果たす人間が現れることを、強く祈ります。